全国各地の本流釣りを1本でカバーする
聖地・長良川が鍛えた王道モデル

　「20cm前後のアマゴやヤマメはもちろん、40cmを超えるサツキマスを1本の竿で楽しく釣れる。使い方次第ではそれ以上の魚にも対応してくれるいい竿ができました」と冨田真規は語る。
　“大物以外はいらない”という極太仕掛けでなくても、0.8号を中心に0.6～1号の仕掛けを使いながら、望外の大物とも戦える。渓流釣り一筋で、北海道へも遠征する冨田にとって、新素材のカーボンシートであるM40Xが実現したこの特性は、まさに理想の1本となったのである。
　「川に立つ人は誰でも、小さいのだけ釣りたい人はいないでしょう？　大きな魚が掛かれば獲りたいはず。この竿は、上竿にしてためているときに、しっかり曲がりながら魚におかしなテンションを掛けないから、標準サイズの魚を楽しく釣れる竿だけど、かなりの大物まで行けます。このモデルになって感度も飛躍的にアップしましたからね」。
　M40Xによる“曲がるのに強い”という特性に加えて、あえて他のモデルよりも穂先を太くした設計から、操作性も格段にアップし、人が多い激戦区でも結果を出せるハイレベルな釣技にも対応している。
　「結構竿抜けになっている渕やその流れ出し周辺にたまる魚を狙うときにも、すごく使いやすいですね。目印や道糸の抵抗を使って流し込む“糸を張らない釣り”でも、ちゃんとアタリを取って掛けられますよ（笑）」。
　この釣技は、ホームの長良川では必須のテクニックで、深場では4つの目印の3つを水中に沈めて使うことや、流れが強めで水深が30～50cmのスポットでも2ｍも仕掛けを水中に流し込んで釣ることさえあるという。
　「本流というのは、小さな渓流とは違ってエサが豊富です。だから5回や10回振り込んだだけで結果が出ることは少ないですからね。やれることは全部やらないと、いい魚にはなかなか会えないですよ」。
　なお、シリーズ唯一の50ｃmマルチとなっているのは、深く立ちこんで魚を追えない状況でも0.8号で掛けた大型を確実に取り込むための装備。これも様々なフィールドを釣り込んできた冨田の提案だ。
　“アユを食っているような大型のアマゴやヤマメ”を獲る。本流釣りのど真ん中をいく王道モデルが完成したのである。

「曲げて獲る」＝柔にして剛の特性で
モンスタートラウトを仕留める　

　「“折ってもいいから曲げてみて下さい”って、最初のプロトを受け取った時に、開発の人から言われたのが、一番印象に残っています。想像以上にいい竿ができました」と吉村政治はいう。
　ニジマス、ブラウン、サクラマスといった時には70cmをこえる、本流に潜むモンスタートラウトを狙う吉村にとって、XXH9.0mは理想の調子を完璧に実現した珠玉のモデルとなった。
　「それまでは、70cmクラスのニジマスのような大型トラウトを狙う釣りって、すごく仕掛けに悩む釣りでした。サケを獲るような剛竿の極太仕掛けではないけれど、渓流魚を釣る延長とは違う。だけど曲がり込むのに強いという特性のおかげで、ハリの選択肢が飛躍的に広くなりました。粘る釣りだから、雨の日や風がある時でも、この長さの竿を軽く振れて、しかも正確に狙ったところへ仕掛けを打ち返したい。そんなわがままな要望を開発に出したら、かなり時間はかかりましたけど素晴らしい出来栄えの竿に仕上がりましたよ」。 　その模様がここで掲載したカットだ。冨田を伴って出かけたプロトロッドのテストでは、道糸2.5号にハリス2号の仕掛けに狙い通りの大型がヒット。限界近くに見えるほど上竿で竿を曲げ込んで仕留めたのは、吉村の自己記録ともなる75ｃｍのニジマスだった。 　「特にニジマスは、跳ねさせないやり取りができないと60～70cmになる大型は獲れません。XXH9.0mは、すごくバランスよく曲がるので、変に魚を暴れさせない。普通の剛竿以上に余裕をもって対処できました」。
　M40Xを中心に強度と張りを両立させたブランクは、操作性の高い先調子により風を切り、狙ったスポットへ仕掛けを入れ、ポイントを丹念に刻めるので、集中力が切れないともいう。
　「先調子で手元に重心があることもあって、特に雨の日の釣りがすごく楽になったのは、持った瞬間に分かってもらえるでしょうね」。
　しかも鋼鉄のムチのように曲がり込み、サクラマスやアメマスの大型を相手に、数々のドラマを演じてくれた。記録に残る至高のトラウトを追うなら、この竿こそ唯一無二の相棒になってくれるだろう。

「伝説の本流釣り師」が世の釣り人に問う
本流ヤマメにこだわったスペシャルモデル

　神速のスピードで尺上ヤマメを量産する堂前明広が、ヤマメを釣るなかで、今最も理想の1本に近いというのが、今回完成したP7.5ｍだという。
「0.2号以下の仕掛けを使うシーズン初期の18cmクラスから、0.6～0.8号の仕掛けを使って狙う40cm超を釣る本流の最盛期まで、1本の竿でカバーできる。細身軽量で先調子のトータルバランスが凄くいい竿です」。
　7.5mという全長は、これ以上、長くても短くてもできない繊細な釣技のためのもので、極細仕掛けと最小限のオモリを使ってエサを流す堂前の釣りを具現化する調子を実現。
「一番俊敏で警戒心が強い27～28cmのヤマメは、オモリ先行で流して出たアタリを掛けないといけないけど、穂先の反応が凄くいいから使いやすい。40cmクラスまで対応できるにも関わらず、尺上クラス相手なら竿全体を曲げることで、0.6号の仕掛けでも対応できます。誰が使っても楽しいけれど、使い込むほどに釣り人の技量に応えてくれる竿になりましたよ（笑）」。
　この竿を完全に自分のものにすれば、“私にしか釣れないヤマメ”を手にすることができるとさえいう。伝説の本流釣り師が、使い手の技量を問う究極の一竿を完成させた。

ソリッド穂先がいい仕事をしてくれる 「感度」に特化したフィネスモデル

　本流スペシャルⅡのなかで、唯一のソリッド穂先を採用したS8.0m。オールラウンダーの長谷川哲哉が、このモデルを手にしたときの第一印象は、なによりもヤマメとイワナが混生するエリアにおける高度な適応力だった。
「イワナとヤマメでは、厳密にいえばベストな合わせのタイミングが違います。自分の縄張りに流れてきたエサを瞬間的に捕食するヤマメは、即アワセがベストですけど、イワナは流れてきたエサを咥えてから、自分の住処に戻ってからのみ込みます。だからヤマメのつもりでイワナを掛けると、すごく取りこぼしが多くなる。でも、この竿はソリッド穂先の追従性のおかげで、混生エリアの釣りで、すごくいい仕事をしてくれるんですよ」。
　操作性と手感度の高さも特筆もの。5Bの大きなオモリを使っても、シャープさを失わず操作性を損なうこともない。
「混生エリアでは、一番上にウグイやハヤ、その下にヤマメがいて、底のほうにイワナがいます。操作性と感度の高さでタナを探れるので、そのポイントにヤマメやイワナが残っているかを早く判断できる。しかも、繊細な竿なのに掛かればしっかり曲がって大物を止める。そんなエリアの本流では、絶対おすすめのモデルです」。

大型魚狙いのザ・オールラウンダー
使いやすいパワーモデルの完成形

「強い竿というのは、ある程度取り回しが悪いことが常識でしたけれど、このモデルでは、そんなイメージは一新されると思いますよ」と長谷川は言う。
　HH9.0mは、パワーこそ先代本流スペシャルのXHと同レベルながら、トータルバランスとブランクの進化によって、振り込む、流す、取り込むという全ての局面で扱いやすさは格段に向上しているのである。
「マルチフレックスは、取り込む時には便利ですけど、やはり竿の感度がある程度下がるので、今回のモデルでは外してもらいました。その分だけ元竿からきれいに曲がるので、大物が掛かっても楽に取り込めます。35～45cmのヤマメがきても安心。50cm級のニジマスがきても余裕をもって対処できますよ」。
　竿の操作性があがったことで、本流竿では特筆すべきレベルで、幅広い釣法への適応力が上がっているのも注目すべき特性だ。
「軽いオモリで、道糸にスラックを作りながら流して目印でアタリを獲る釣り方でも、B～3Bという大き目のオモリを使って、竿先でアタリを獲る釣り方にも十分対応してくれます。アベレージサイスが大きな川へ行く人には、一押しの1本ですね」。