テクニカルなフカセ釣りにおいて、自分の釣りスタイルや釣り場、魚の大きさにマッチしたロッド選びが悩ましいところ。特に魚を掛けたときの全体の曲がりが気になる。曲がりとは、すなわちロッドの復元力だ。魚の引きの強さを吸収し、いかに反撃に出るのか。つまり魚を掛けたときのロッドの調子が重要になってくる。がま磯シリーズでは「胴調子」「先調子」「中間調子」「本調子」の4つのパターンがあり、それぞれに魚をあしらうという究極の特性がある。
1.4kgの負荷をかけての復元力テスト(グレ45cm相当が沖へ走ったシーンを想定)。上は先調子のグレ競技スペシャルⅣ1.5号-5.3m、下は胴調子のマスターモデルⅡ尾長Mタイプ-5.3m。 先調子のロッドは胴の部分に張りがあり、3番から4番(元上)を曲げてやり取りするタイプで、トーナメントなど手返しの早い釣りや本流釣りに適する。シャキッとして操作性がよく、持ち重りも少ない。 一方、胴調子のロッドは、胴の部分に魚の抵抗が乗ってきてよく曲がり、粘りが強い。細ハリスでの大型狙いなどに適する。4番(元上)から元竿まで曲げてやり取りするタイプで肉厚で丈夫。 写真のテストではそんなに大差を感じとれないと思うが、実際に魚をかけてみると、急に反転して逃げる、下に突っ込むなどの咄嗟の抵抗でそれぞれの調子が生かされ、竿はもっと曲がり込む。
フィールドテスターが教えてくれる
“がま磯調子”4タイプの特性
自分にマッチしたのはどれだ
胴調子とは
胴部分までスムーズに曲がり込み魚の引きを受け止める。竿を絞り込むと良く曲がり、粘りが強いのが特徴。そのため、ラインにやさしく、細ハリスでスレた大型を狙うのに適している。
北村憲一
きたむら・けんいち スレた大型尾長を仕留めるために高知の沖ノ島や鵜来島に通い込む。松田稔に師事し技を磨く。自己記録は沖ノ島での65.5cm
アテンダーⅡは、がま磯の特徴である粘りのある胴調子で、そこから進化してマスターモデルⅡになったんですよ。アテンダーⅡはオールマイティーな竿だったんですけど、口太用と尾長用に分けて先鋭化させたのがマスターモデルⅡですね。 尾長と口太って引きも突っ込み方も違うんで、その動きに合わせて設計して、より胴に入りやすくなりましたね。胴調子でもシャキッとしていて、特に繋ぎ目の構造の進化がすごいんで魚の大きさに合わせて竿が勝手に曲がって仕事をしてくれます。師匠(松田稔)がよく言う、ゴムのように曲がり起こしてくれる竿ですね。ホームで出番が多いのはマスターモデルⅡ尾長のMHタイプの5m、愛媛の日振島などではマスターモデルⅡ口太のMHタイプ、デニオス1.5号の5mも使っています。
胴に乗せて竿全体で浮かせる
特に尾長を取るために、パワーを胴に乗せてジワッと浮かせてくる、尾長って歯も強いし引きも格段に口太より粘っこいので、それを竿全体で止める胴調子になってます。 それと僕のよく行く高知の沖ノ島や鵜来島のデカ尾長は特別でスレてるし、細ハリスでしか食わせられないと思うんですよ。細ハリスでも粘りでカバーしてくるのが胴調子の竿なんですよね。
先調子とは
胴部分に適度な張りがあり操作性に優れ持ち重りを感じにくい。仕掛けのコントロール性能にも優れる。そのため、仕掛け投入から魚のたも入れまでがスムーズにこなせるので、手返しの早い釣りや本流釣りに向いている。
前岡正樹
まえおか・まさき 三重と伊豆をホームに遊撃的に攻めるテクニシャン。トーナメントにも意欲を燃やす。シビアなウキ使いには目を見張る
がま磯の先調子の代表、グレ競技SPⅣは、本調子の少し硬めのイメージですね。最終的には胴に入って曲がるんですけど。良さは仕掛けを振り抜いたときに、ピンポイントに正確に運べる、矢のようにビシッと決まるところ。無駄な流し方をしないためにも先調子の操作性はいいですね。
魚の位置と距離が把握できる強み
それに魚を掛けたあと、極端な胴調子の竿はどこまでも曲がる感覚ですけど、僕は細ハリスで魚に反転させず止めたい浮かせたいので、いま魚がどこにいるのかが分かる、いまどんな動きをするのかが分かる竿がいいんですよ。そんな想像の世界が手に取るように分かり、やり取りができるんです。魚の位置と距離が把握できるのも強みですね。 グレ競技スペシャルはⅢから使ってますけどⅣになって格段によくなってますね。僕のまさしく愛竿ですよ。特に1.25号の5mは、道糸1.5号とハリス1.5号が使えて、口太の40cmオーバーを強引に浮かせられますね。竿をたたかないギリギリのやり取りができますね。 それと遠投性能もいいですよ。グレの数が少ない潮の流れがあんまりないホームの三重では遠投ポイントに正確に仕掛けを送り込むときも先調子のコントロール性が有利ですね。
中間調子とは
先調子と胴調子の特徴を併せ持った竿。張りと柔軟性を両立した万能型ロッドで操作性も良く、ある程度まで粘れるパワーを持ったバランスに優れる竿。そのため、様々な状況に幅広く対応できる。
久保野孝太郎
くぼの・こうたろう 関東屈指のグレハンター。四国や九州の遠征も数多くこなす。超繊細なフカセ釣りで口太も尾長も手玉に取る
クセのない誰でも使いやすい調子です。申し分のないトータルバランスがとれた“ミスターがま磯”ですよ。 がま磯カタログにそれぞれの竿の調子を表したポジショニングマップってあるんですけど、それのど真ん中に堂々とあるんですよ。 先調子でもない、胴調子でない、本調子でもない、いわゆる中間調子なんですよ。 こう言うと、特色のない個性のない竿だなと印象を受けると思うんだけどそうじゃない。がま磯シリーズのすべての良さを盛り込まれているオールラウンド的な竿なんですよ。たぶん初めて持った人は完成度の高さに感動すると思うんですよ。これががま磯の中間調子かってね。操作性も当然あって使いやすいし、魚を浮かせるパワーもあって現場でも超満足すると思いますね。
ワンランク下の1号でも力強い
曲がり方は一番きれいじゃないかな。がま磯独自のアクティブサスが効いてジワッと曲がって最終的にはきれいな弧を描きますね。僕はインテッサG-Ⅴ1.25号5mをよく使うんですけど、ワンランク下の1号でも近場では十分ですよ。それと、どんな状況か分からない初めての釣り場に行く時には、クセのない竿がいいですね。教科書的な曲がりをするんで安心です。 それと価格帯を抑えた同じく中間調子のアルデナも優れものです。特にビギナーには打って付けでしょう。一度がま磯の良さを体験してみてください。
本調子とは
中間調子の特性をもちつつ、竿全体で曲がり込めるように柔軟にした竿。竿全体で魚の引きを受け止めるので、極めて美しく曲がる竿。そのため、魚を怒らせずいなすイメージで取り込める。
猪熊博之
いぐま・ひろゆき ラインをまったく張らず全遊動仕掛けで攻めるフリーフォール釣法の使い手。楽しく気負いがないがトーナメントでの実績は多い
魚を掛けるとこの竿の良さが分かる、魚をいなすというのが楽しい竿です。だから取り回しよりも魚を掛けてからの良さが上回るような竿です。掛けてから竿全体で魚を乗せるっていうような竿。胴調子でもなく、先調子でもなく、その中間というか、がまかつではそれを本調子って言ってますね。大きな魚になればなるほど、暴れないというか大型の泳力をいなしてくれる感じで僕好みですね。とにかくきれいに美しく曲がりますね。
鈎をのみ込まれても負担を軽減
それとこの竿の強みといえるんですけど、特に口太を釣っていて不意に尾長がヒットしたとき、大体は鈎をのみ込まれているじゃないですか、そんなときでもきれいに曲がる本調子だからラインにかかる負荷を軽減させて取り込むことができるというのも大きなメリットですよ。 たとえば大分県で40〜45cmを相手にするなら、1.25号がベストチョイスだし、紀伊半島や伊豆半島周りでは1号かな、これは釣り人の好みだけどね。 それとロングスペシャルという5.8mも活躍しますね。ロングハリスを使った仕掛けのさばきやすさや、やり取りの優位性、簡単にラインメンディングができる、遠投性など長い竿のメリットを体感できますよ。