まだ海水温が高く餌取りも多い時期だが、シーズン序盤からコンスタントな釣果を期待できる黒母瀬のマナイタへの上礁が叶った久保野孝太郎と猪熊博之。
二人が長崎県の上五島エリアまでやって来た理由は、緊張感のあるやり取りを楽しませてくれる良型と出会うために他ならない。
お互いの釣技を認め合う、がまかつテクニカルインストラクターの猪熊博之(左)と久保野孝太郎(右)が、長崎県の上五島でのグレ釣りにチャレンジ。
アテンダーⅢを手に価値ある1尾との出会いを目指す。
いぐま・ひろゆき
ラインをまったく張らず全遊動仕掛けで攻めるフリーフォール釣法の使い手。“G杯グレ”はもちろん数々の全国大会でトップに立つ。ホームグラウンドは大分県一帯。
潮の変化を見極める
40cm超の口太グレをメインに同サイズの尾長グレがまじってくるという黒母瀬(くろもせ)のマナイタは、突然アタってくる大型にも余裕で応戦できるというがま磯アテンダーⅢの実力を確認する絶好の舞台だ。
沖へと出て行く下げ潮が本命となる東向きに釣り座を構えた猪熊は遠投からスタート。若潮で満潮直後のタイミングとあって潮の流れは不明瞭だったが、1投目から小型の尾長が出迎えてくれて、魚影の濃さと活性の高さが実感できる。
猪熊がチョイスした竿は1.25号53のアテンダーⅢ。これまでに数々の竿を手にした猪熊が驚いたのは、重量バランスの良さがもたらす持ち重りのなさだった。
鈎はA1 TKOの5号でスタートし、ツケ餌の沈下速度をセーブしたい場面では掛りすぎ口太4号にチェンジした。
2投目、3投目とアタリが連続し、早くも38cmの口太をキャッチすることに成功したが、ここからいかにしてサイズアップしていくのかが課題。潮の流れがゆるく、沖から手前までの広範囲で小型の口太とイサキが幅を利かせているという状況で、より精度の高い繊細な釣りが求められる。マキ餌と仕掛をどのタイミングで合わせるのか。外すのであれば、右か左か、はたまた沖か手前か。
猪熊が得意とする先打ちのマキ餌に対する正確無比な仕掛の投入はこの日も絶好調。
アテンダーⅢは胴調子でありながら、先短設計の採用により操作性が飛躍的に向上している点は見逃せない。
「魚影が濃い五島では、いろいろな仮説をすぐに検証することができます。例えば浅ダナの取りこぼしがないように鈎を軽くして沈下速度をセーブしてみようとか、ツケ餌が残るのでガン玉を打ってみようとか。今は沖の潮が良い感じなのでチャンスかもしれませんよ」
ウルトラアクティブサスデザインによるスムーズな支点移動が良型の引きを楽しませてくれる。
潮の変化を見極めながら、最善のスポットに照準を合わせていく釣りが猪熊の真骨頂。ウキの下20cmにG5のガン玉を打った最初の1投で、きっちりと40cmオーバーの口太を仕留めると「やっと五島らしいサイズが出ましたね」と笑顔を見せた。
常に注意を払っているのは潮流の変化。40cmの口太を仕留めたのは干潮の潮止まりが近づいてきたタイミングだった。
胴から曲がり込むアテンダーⅢは魚を怒らせないのか、竿を叩かれることもなく、角度を保ったままゆっくりと構えているだけでグレが勝手に浮いてきた。
アテンダーⅢは、猪熊が得意とする繊細なアプローチにも最適な竿へと進化した。
くぼの・こうたろう
ゼロウキ釣法をメインに臨機応変に攻めるテクニシャン。ホームグラウンドは伊豆半島。関東勢で初めて“G杯グレ”の頂点を奪取。近頃は四国西南部への遠征もこなす。
繊細なアタリをとらえる
北向きで釣り座を構えた久保野は1投目に30cm級の尾長を掛けた。
浅いタナでアタってきた尾長に対応するため、G‐HARD V2 セレクトグレの号数を5号から6号へとチェンジすることを即決。ひとヒロ半のタナできっちりとアタリを取る釣りを展開すると、タモ入れサイズの口太が次々と竿を曲げてきた。
複雑な潮の中でマキ餌とツケ餌を確実に同調させ、タモ入れサイズの口太を連発させる。
イメージするタナで先打ちのマキ餌とツケ餌を同調させるためにチョイスしたのは、馴染むとウキごと沈んでいく仕掛のセッティング。ラインを張らずに仕掛を馴染ませ、馴染んだ後はラインを張らずゆるめずの状態にすることで、仕掛が入り過ぎないようコントロールする。
下げ潮が勢いを増してからはパターンにハマり、コンディションの良い口太を掛けまくった久保野だったが、決してイージーに釣っているわけではない。
「ウキを沈め気味に探ってみても型が出なかったので、今は浮かせて釣っていますが、沖は右流れで手前は左流れという状況なので、不用意に道糸を張ってしまうとマキ餌とツケ餌がズレてしまいます。ある程度ほったらかしにするしかないのですが、アタリがとりづらいですね」
一定の竿角度でためているだけで、魚を浮かすアテンダーⅢ。カーボン含有樹脂「タフライト」を採用したリールシートは剛性に優れ、何の不安もなく大物と対峙できる。
最大の見せ場となったのはラスト1投。そっとラインを張ることでキャッチした小さな違和感に迷うことなく鋭いアワセを決める。
1.25号50のアテンダーⅢが大きく曲がり込んだが「まだまだ曲げ込んでも大丈夫」とばかりに、底知れない粘り強さを見せる。足元でさらに強烈な抵抗を見せるグレに対してもさらに竿を曲げ込んでため、じわりと浮かせることに成功。
高強度かつ高弾性化をはかった炭素素材TORAYCA® T1100Gを縦方向のみならず横方向にも入れるタフマトリックスシステムを採用することで、カーボンを肉厚にしつつ軽さと細さを実現したアテンダーⅢ。
スムーズな曲がりはがま磯の真骨頂といえるもので、斬新なデザインテーマ、一新されたリールシートやエンドグリップの形状がこの竿と共に磯に立てる喜びを感じさせる。
「それまで手を付けていなかった中間地点を狙いました」
納得の表情で手中に収めたのは、46cmの口太だった。
試行錯誤の末に辿り着いた良型に喰わせるための正解は、アタリのとりづらさもいとわない繊細な釣り。
粘りとパワーをもたらしてくれる「ウルトラASD」によるスムーズな曲がりが、勝利の瞬間が近づいていることを確信させる。