チヌを制す松田稔 のサイトフィッシング 至近距離の年無しも楽に獲れる一本調子の優位性
仕掛操作がしやすい
張りのある1号で挑む
大好評のアテンダーⅢに2024年春、追加されるのがチヌ狙いに最適な1号以下の号数だ。
2023年秋、1号ロッドの最終プロトを手に広島湾の沖磯で竿を出した松田稔は、巧みなマキ餌ワークで足元にチヌを浮かせサイトフィッシングで良型を連発。
頭を振るチヌに対する一本調子の優位性を証明したのだった。
まつだ・みのる
グレ釣りはもちろんチヌ釣りとアユ釣りにも一家言をもつレジェンド。鬼才と異名をとり釣り界に功績を残し続けている。釣りにおける数々の至極のテクニックは圧巻。
いまはがまかつテクニカルアドバイザーとしてロッドやハリなどのタックル開発に心血を注ぐ。
前作のアテンダーⅡから12年、カーボン素材TORAYCA®T1100GやウルトラASD、タフマトリックスシステム、先短設計など、最新のマテリアルとテクノロジーを駆使して生まれ変わったアテンダーⅢ。洗練されたロゴ、差し色のブルーや魚影などデザインも映える。
2024年春に追加のチヌ号数
追加される0号、0.6号、1号。チヌ狙いに最適なアイテムだ。
前日は弁天島でウォーミングアップ。その状況から、潮通しのいい磯がいいと判断し翌日はタナゴ岩に渡礁した
扱いやすくてさばきもいい1号5m
チヌの魚影がすこぶる濃い広島湾。その中ほどに位置する大奈佐美島の北側にぽつんと浮かぶ名礁タナゴ岩に渡礁したのは午前11時だった。ここには何度も上がっている松田は北向き先端に釣り座を構えた。足元から左沖に延びるハエ根に沿うよう右から斜め左沖へ気持ちよく潮が流れている。この潮筋を狙うのだ。
周囲にはカキ棚が連なりチヌの魚影がめっぽう濃いタナゴ岩。中央の左側で見えチヌを攻略した。
残暑厳しい時期の釣り。短期決戦に備えて準備する。
松田がセレクトした竿はアテンダーⅢ1号5m。きっちりとウキ下を決めてサシ餌先行で流し込むため、軟らかすぎる竿よりもある程度の張りがある1号が扱いやすく、腕の延長のようにさばくことができる5mがいいのだという。
道糸1.75号、ハリス1.25号にプロト鈎8号。ウキはB-BBで、道糸とハリスの直結部にBB、ハリスの真ん中にBのガン玉を打った。
「チヌやマダイはボイルが好きなんよ」
オキアミ生とボイル、アミエビをまぜたマキ餌を足元に2杯打って餌取りを集め、竿1本ほど沖へ本命用を2杯打ち、それに合わせるように仕掛を投入。サシ餌はボイル。ウキ下は4ヒロ半だ。
オキアミの生、ボイル、アミエビをまぜたマキ餌を打ち込む。餌取りが生とアミエビを食べている間にボイルが沈みそれにチヌが寄ってくる。
魚を寄せる浮かせる
大切なのはマキ餌ワーク
マキ餌を拾う魚が沈む前に次のマキ餌を打つことで、どんどん浅く浮かせていく。
3投目にチャリコ(マダイの若魚)を釣るものの、状況が芳しくないことから、11時55分に磯の中央東向きに釣り座をチェンジ。正面から当てた潮が左へはらい、磯の出っ張りを回り込んでいく。かなり釣りづらそうだ。
チヌを怒らせずに寄せる安心感
ポイント周辺は底が見えるぐらい浅いためウキ下はふたヒロ。ウキ止めを下げてウキを固定にし、ハリスに打っていたオモリを直結部に上げる。竿2本ほど前方にマキ餌を打ち、潮下になる左手前に仕掛けを打ち込んでマキ餌とサシ餌の同調を図る。
目の前の浅場がアツい
正面から当てた潮が左の出っ張りを回り込んでいく。釣り開始からしばらくは出っ張りの前でチヌは食ってきたが、マキ餌が効くにつれて正面の浅いところに姿を見せ始めた。
12時19分、出っ張りの前に達したウキが消し込まれた。アテンダーⅢがワンピースロッドさながらの美しい弧を描く。取り込んだのは40cmクラスのチヌ。直後に同型を追加した。
タモ入れに入るのは圓山一樹。広島湾のチヌに精通するエキスパート。松田の釣りをサポートするため駆けつけた。
左の出っ張りの前から引きずり出したチヌに、タモ入れに入った圓山ともどもしてやったり。
出っ張りの向こう側に回り込まれると厄介だが、竿尻を下腹に当てて右へ竿を倒し締め込むことで、竿の曲がりが引きを吸収し、チヌを怒らせることなく引き寄せてくる。魚に先手を取らせないとはまさにこのこと。その安心感はどうだ。
魚を浮かせるパワーは圧巻
下腹に竿尻を当てて絞り込むと、ウルトラアクティブサスデザインが魚の引きを吸収しぐいぐい浮かせてくる。
足元1ヒロに浮くチヌを狙い撃ち
圧巻だったのは、ここからだった。
マキ餌が効き出すと足元上層に群れるオセン(スズメダイ)の下にチヌとマダイの姿が見え始めた。マキ餌を続けているとチヌの数は増え、マキ餌を拾ったチヌが沈む前に次のマキ餌を打つことでどんどん上ずり、海面下ひとヒロほどまで浮いてきた。高知県沖ノ島や鵜来島のデカ尾長のような光景だ。
「オセンなんかの餌取りは赤アミ(アミエビ)や生を喰うけん、ボイルは通るんよ。チヌはボイルが好きやけん、寄ってくるし浮いてくる。サシ餌のボイルも通りますわ。そうやからといってボイルだけを撒いたんでは、餌取りが反応しだして通らなくなる。赤アミと生とボイルをまぜて使わんといかんのよな」
午後1時、ウキ下をひとヒロの固定にし、直結部に上げていたオモリを下げ仕掛の操作性を高めてなじみを早くする。マキ餌を拾うチヌの口元にサシ餌が届くよう仕掛を張り、一発で喰わせたのは40cmオーバーだ。
強靱なバットが主導権を渡さない
午後1時24分、足元に見えるひときわ大きなチヌをサイトフィッシングで喰わせた。ラインに優しいアテンダーⅢの曲がりが1.25号ハリスの強度を最大限に引き出してくれる。
マキ餌に対してチヌはさらに浅く海面近くまで浮いてきた。ウキ下を矢引きに詰めてボイルを鈎に刺し、足元にマキ餌を打つ。口元へサシ餌を届けられるようチヌの動きをじっくり見ながらサシ餌を海面につける。タイミングを見計らい竿で吊るしながらゆっくり下へ落としていくと、ウキが海面に達する前にチヌがぱくりとサシ餌を喰うのが見えた。少し送り込んでからアワセを入れる。同型のチヌがタモに収まった。
マキ餌の流れ方や魚の動きをじっくりと観察して狙いを絞る。サイトフィッシングの基本だ。
パターンをつかみたたみかけるように釣果を重ねていくのはさすがというほかない。
継ぎ目を感じさせない理想の調子
そして、ひときわ大きなサイズに照準。同じパターンですかさずヒットに持ち込んだ。これまでとは明らかに違う強烈な締め込みに、スムーズに支点を後ろにずらしながら曲がり込んでいくアテンダーⅢ。引きが止まるやいなや、竿が魚を浮かせてくる。継ぎ目の存在を感じさせないウルトラアクティブサスデザインによる曲がりと復元力。これぞ松田が理想という「一本調子」だ。
やがて海面に姿を現したのは、頭の大きないかついチヌ。仲間のタモに収まったのは50cmの年無しだった。
理想の調子がチヌ号数にも
この日のMAX50cm
短時間の釣りではあったがこの50cmを頭に5尾のチヌを仕留めた。
「チヌはな、頭を振るだろ。竿が硬いとショックを吸収しきれずに、力がかかったり抜けたりする。竿を叩くっていうのは、そういうことなんよ。当然糸にかかる負担は大きいから切られたり、竿をのされたりするんよな。
アテンダーⅢは、魚が走った分だけ竿全体がゴムのように引っ張ってくれる。チヌが頭を振って緩んだときも竿が勝手に張ってくれるから、竿が叩かれず糸が受けるショックがない。ほなけん、1号や1.25号のハリスでも下腹に竿尻を当てて締め込むことができる。誰でも楽に魚が取れるんよ」
「魚が引いた分だけ曲がって止まればすぐに戻ってくるゴムみたいな竿が理想なんじゃ」と語る松田。アテンダーⅢはまさにその理想を具現化した一本だ。
穂先のひと節を短くすることで得た先調子さながらの操作性も釣り人に大きなアドバンテージをもたらすことはいうまでもない。
アテンダーⅢ1号5mを手に、電光石火のサイトフィッシングで、タナゴ岩のチヌを制した松田だった。
「これからの釣りは座ってのんびりやったらいい」と冗談とも本気ともつかないことをいいながら釣果を重ねる。
座っていても魚に先手を渡すことなく楽に取れるのがアテンダーⅢだ。