2021年12月 愛媛県日振島
アテンダーⅢプロトテストに
はじめてカメラが入った
それはまだベールに包まれていたが
松田稔の熱い思い入れは
変わっていなかったのだ
リリース予定のはるか前から行われていた松田稔による3代目アテンダーのプロト実釣テストに、はじめてプレスのカメラが入った。テストの目的は1.25~1.75号の調子を固めることという情報だったが、場所はグレのトーナメントが数多く開かれる愛媛県日振島。口太グレの魚影も濃くテストにはうってつけのフィールド。その合間を縫って松田に開発中のアテンダーについて聞いた。
鬼才・松田稔にとっての
アテンダーとは
「誰もが釣りやすい竿を作らないかん」
これは松田の竿づくりにおける最大のコンセプトだ。
本格的に松田がプロデュースを手掛けたのは2011年にリリースされたがま磯アテンダーⅡから。魚の引きに耐えているだけで、特徴である強靭な粘り腰によって魚をオートマチックに浮かせてくれる、やり取りしやすい、誰もが使いやすい、釣りやすい竿となって登場した。
最新の素材になって代を重ねいくら進歩を果たそうが、この“松田哲学”は、アテンダーにとって欠かすことのできない思想となっている。
また、グレだけではなく、あらゆる磯魚を対象にした万能ロッドモデルであることも、誰もが釣りやすい竿の不可欠な要素だ。
実際に松田がテストしていたプロトタイプを見ても、その松田哲学はしっかり継承されているうえに、竹竿のようなシームレスな曲がりは、より洗練されているし、仕掛を振り込む操作も前作よりダイレクトにできているイメージを持った。
前作より向上した操作性で仕掛けを緻密に送り込む。
前作でひとつの頂点に達したと思われた胴調子だが
なぜさらにそれを追い求めるのか
先調子の竿は、掛けた魚に大きな抵抗を与えて竿をたたかれた上に走られてしまうが、胴の部分から曲がる胴調子は、魚の抵抗を吸収し魚を暴れさせずにいなせる。そのため楽にやり取りできる。よって強い粘い胴が不可欠になってくる。
良型グレに対応するロッドワークにはこの胴調子が威力を発揮しているのは言うまでもない。
アワセを決めるやいなや、竿をシャクらないで魚に走られないように手元に引きつけて、魚の引きを胴に乗せて締め上げる。魚が引いても道糸を出さずさらに締め上げる。それで10秒耐える。この10秒で魚の体力を消耗させて自分の有利な取り込みに持っていくわけだ。
最初の一撃から胴の部分に魚の抵抗を乗せて竿の角度を維持していれば抵抗がずっと竿にかかって魚は沖に走らないし、魚の弱りも早いわけだ。グレのように泳力のある魚を確実にランディングに持ち込むためには強い粘りのある胴調子が断然に有利なのだ。
松田の理想の胴調子追及には限りがないといっても過言ではない。日振島でも、グレを掛けては曲がりをさかんにチェックしていたのが印象的だった。
先代、アテンダーⅡとは
どう違うのか
よりスムーズな胴調子を目指すために試行錯誤を繰り返したのは、節の継ぎ目である。この部分にこだわることで、松田がいう竹竿に近いワンピースのようなシームレスな曲がりと粘り腰が生まれるわけだ。
そこで今回は前作より継ぎ目の段差を減らして、継ぎ目部分のカーボン素材を変えるという構造、これはのちに、「スーパーASD(アクティブサスデザイン)」を超える「ウルトラASD」と名付けられた新機構である。
もうひとつこだわったポイントは、胴調子ロッドの唯一のウィークポイントともいうべき操作性を向上させることである。磯竿では「がま磯 グレ競技スペシャルⅣ」から採用された設計「先短設計」で、穂先部を短くすることで操作性が飛躍的によくなるというもの。また、魚とのやり取りで引き受ける部分が増えることで、がっちりと対応できるようになった。
そして、アテンダーⅢはまた一歩完成に近づいた。
松田の過酷な実地テストをへて、また一歩、また一歩とアテンダーは進化し、深化する。まだ見ぬアテンダーⅢをめざして…。