敷地翔太朗 Shotaro Shikiji 釣るまでの過程に価値アリ
しきじ・しょうたろう
1993年生まれ。釣り好きの父親に連れられてフカセ釣りは小学校低学年から。中学に入ると地元の興津や愛媛県武者泊の沖磯で口太を追う。高校卒業後は釣具店に勤め釣行回数が激増し、沖ノ島&鵜来島のデカ尾長釣りに魅了される。
松田稔のDVDや本を参考に独学で腕を磨く。水島2番のカベで仕留めた64.5cmを頭にこれまで仕留めたロクマルはふたケタを超える。
大きさよりもプロセスを重視
強風をオモリで制し4尾を奪取
開始2時間で3尾の速攻
「鵜来島、沖ノ島の尾長って浅いタナに魚は見えてる、手を伸ばせば触れるくらいのところにおるけど釣れん、切られる。やっぱりその難しさやないですか。1尾釣ったら価値がある。60cmだろうが、45cmだろうが、その日にこうやって釣ったっていうのが自分の自信になるし引き出しも増えますよね」
そう語る敷地翔太朗が渡礁したのは水島2番のカベ。このところ、尾長の姿はよく見えており期待が持てるポイントだ。天気はいいが、この海域につきものの強風が右から左へ吹き抜けていく。潮の流れもゆっくり左だ。
マキ餌を撒くとすぐに魚が姿を見せた。イサキやイスズミにまじって尾長の数も多そうだ。
足場が高いことからアテンダーⅢ1.75号の5.3mをチョイス。道糸、ハリスは2.75号、鈎はMシステム尾長速攻の8.25号。4号のウキの直下にG4を打ちウキ下ひとヒロで午前7時に釣りを開始した。
足場の高いカベの釣り座。潮は右から左へ流れ、同じ向きに強い風が吹く厳しい状況。
イサキをパタパタと連打したあと、25分に46.5cmをゲットすると、8時9分には47.5cmを追加。さらに9時には52cmと、わずか2時間で3尾の尾長を仕留める速攻だった。
釣り開始から25分で仕留めた46.5cmにしてやったり。
足場が高いことから選んだ1.75号5.3mが尾長の引きを受け止める。
「やり取りには本当に安心感があります」
余裕とパワーを与えてくれる
5.3mのストローク
「朝は見えているサイズが大きくても50cmくらいかなと思いながらやりよって、それできたのが1尾目。そのあとは横風が強くなってきたので、道糸にガン玉を打って、仕掛が滑らんようにして釣りました。それで2尾目、3尾目と同じような感じで喰ってきましたね」
それはどういうことなのか、敷地は詳しく教えてくれた。
道糸が受ける強風の影響を抑えるためウキの上70~80cmにジンタン4号を打った。
「できるだけマキ餌の中にサシ餌先行の状態で仕掛けを斜めにキープしたいんですよ。ところが風が強いので上潮が滑って、どうしてもウキが先に流れて仕掛けを引っ張ってしまう。それも横風なのでできることは限られているんですよ。
そこでウキの上70~80cmのところにG4を打って、ウキが先行するのを抑え、少しでもサシ餌先行の状態をキープできるようにしたんですよ」
オモリの位置は狙う距離や風の向きなどによって上下に動かし仕掛のなじみを調整していたとのことだった。
尾長釣りはDVDや本が先生
父親に連れられて中学生のころから沖磯に通っていた敷地が尾長釣りを始めたのは20歳のとき。「人数がそろわないと船が出ないから」と声をかけられて行った鵜来島が最初だった。
「エボシに上げてもらったんですが、60cmを超えるような尾長が見えよったんですよ。掛けても切られるし、後半はぜんぜん掛けられんようになって、悔しくてね。それをどうにか釣りたいと通うようになりました」
松田稔のDVDを見たり本を読んで研究し、そのシーズンの春に59cmを仕留めると、5月の終わりには初のロクマル、62.5cmを手にしたのだ。
「尾長は時期的にもう終わりだったので姫島にイサキ釣りにでもと行ったら、東のハナが空いていると。船頭がそっちのほうがイサキもいいとのことで上がったんです。すると11時ごろからチラチラ尾長が見えだしてきて、それを狙ったらきました。取り込んだあとは1時間ぐらい、手も足もずっと震えてましたよ」
自己記録の64.5cm は2018年11月28日、水島2番のカベだった。
「その日は朝からけっこうアタっていて52cm、53cm、55cmと釣ったあとにきたのが64.5cm。逆光でちょっと見にくくて、海の中をイメージして釣った感じでした」
自己記録は水島2番のカベで仕留めた64.5cm。これはその記念魚拓。
すごい体高だ。
ちなみにこの日は10尾ほどの釣果を得たというから恐れ入る。
多いときは週に3回、4回と尾長狙いに通ったこともある敷地。DVDや本だけでなく他人の釣りや海の中をしっかり見ることで得た情報を自分の釣りにフィードバック、融合させて技術を高めていった。師匠を持たない敷地のスタイルだ。
アテンダーⅢのキャスト性能
時間の経過とともに風はますます強くなってきた。弁当船のあとは見えなかった魚の姿もお昼前には再び見え始めた。
先調子ロッドのような操作性を実現した先短設計により、強風下でのキャスト性能や操作感はすこぶる高い。
浅いタナに浮上する尾長グレ。仕掛が上滑りするのを抑えて喰わせにかかる。
「尾長釣りで大事なことはやっぱり海の観察ですね。釣るって技術でいえばマキ餌との同調。
サシ餌にはウキもあれば糸も鈎もある。それをいかにマキ餌と一緒のように落としていけるか。同調できればチャンスが増えますからね。マキ餌も散らばったらいかん。ある程度は固めて撒いて、そこに下手投げでサシ餌を入れる。このコントールが大事で、アテンダーⅢのキャスト性能は本当にすごいですね。今日みたいに風が強いと、いままでの竿では狙ったところへそんなバンバン決まってなかったと思う。先端を短くした(先短設計)効果でしょうね」
トビワタリから伸びる泡の筋へマキ餌を打ち、その中にサシ餌がなじんでいくよう計算し仕掛を投入。強い横風のため仕掛操作は思うようにできないが、穂先からウキまでが最短距離になるようにしてアタリに備える。波などの変化でシャクっていることもあるというが、ウキの傾きなどわずかな変化を感じたらアワセを入れる。怪しきはアワせろの徹底した早アワセも心掛けていることのひとつ。
そして11時50分、46cmの尾長を仕留めたのだった。
海面に姿を見せた尾長の勇姿。尾ビレの形と大きさに惚れ惚れする。
まるでジョイント部がないように弧を描くアテンダーⅢ1.75号5.3m。ゴムのように魚の引きに追随し戻してくることで魚を早く弱らせるのだ。
美しい曲がりと粘りが
尾長を獲らせてくれる
「横風が強いと竿がS字にたわんで仕掛の操作がしにくいものですが、アテンダーⅢは張りがあってたわまないので操作感がすごくいい。それは合わせやすさにもつながります。やり取りに関してはなんの問題もないですよ。魚の走りを止めてから最後まで本当に楽ですよね」
竿のポテンシャルを存分に感じていかし、強風下で手にした4尾。この経験はどのような自信と引き出しになって、これからの釣りの力になっていくのだろうか。
この日のマックスサイズとなる52cm。上アゴをがっちりとらえたMシステム尾長速攻8.25号の上に見えるのはタングステンの中通しオモリ。サシ餌の安定を図るため朝から使っていた。