海上釣堀釣果アップの秘訣はエサの種類と使い分けがカギ
飽きやすいのが海上釣り堀の魚10種類以上のエサを持ち込むことの優位性
海上釣堀における鈎のセレクトに関し、林のアンサーは実に明解だ。
「ケン付き真鯛10号のナノスムースコート マダイ狙いには、この鈎をメインで使用しています」
フッ素コートであるナノスムースコートの貫通力が抜群にいいと話す。トラブルなくスピーディに取り込むため、ハリスは3号。喰い渋り時にはマレに2.5号まで細くすることもあるが、ほとんどを3号でカバーする。
「青物狙いでは泳がせ釣りの際中にアジやウグイが外れにくいように、ケン付真鯛12号の金鈎を使っています。ナノスムースではなく、金メッキです。」
その一方で、使うエサの種類は驚くほど多い。
黄色いダンゴ、茶色いダンゴ、バラけるダンゴ、溶けるダンゴ、鳥ササミ、むきエビ、キビナゴ、カタクチイワシ、プチトマト、小イカ、カツオ。
活き餌がシラサエビ、アオイソメ、ウグイ、アジ、そして小型のクルマエビ。
この日、林が用意したエサの種類は実に16種類にのぼった。海上釣り堀における林の技術は、竿にしろ仕掛けにしろ誘いにしろタナの攻略にしろ抜きんでているのは間違いないが、エサの種類とその使いこなしこそ、林の釣果を支える要といえる。
例えば、生きたクルマエビといわれれば、その入手方法さえ想像できない人も多いだろう。林は家からけして近くはない浜名湖まで買いに行ったり、浜名湖で入手が難しい季節には沖縄から取り寄せたりもする。これを19℃以下の水温で管理するため、夏場はクーラーボックスの中にエアーポンプを仕込み、暑い空気を吸い込まないようにして水温が上がらないようにしている。当然、前日に仕入れるわけだから釣りをするまで元気に生かしておく必要がある。真夏にずさんな管理をすれば、あっという間に死んでしまうのは想像に難くない。
鳥肉やムキエビに関しても鮮度の追求や部位の使い分け、処理方法などエサの一つ一つに対し、相当なノウハウがあるようだが、とにもかくにも持ち込むエサの種類が多い。
林
「たくさんの種類のエサを大量に持ち込む必要はありません。種類はたくさん、量は少量で構いません。一緒に行く釣友がいるなら、共同で買って分けるようにするところから始めてみてほしい」
最初のうちは茶色のダンゴ、黄色のダンゴ、ササミ、アオイソメ、シラサエビ、活きアジあたりをそろえて持っていくところから始めてみてはどうか、ということだ。
朝一番は最大のチャンススタートはダンゴエサで数種類を使い分ける
沢山の種類のエサを持ち込んでいるが、使う順番もだいたい決まっていて、まずはダンゴエサの出番。開始のタイミングではダンゴエサを使う。このダンゴエサの使い方と使い分け、切替のタイミングが絶妙である。
林
「ダンゴで釣れるうちはダンゴで押し通します。というのもダンゴエサは、比重が大きくタナにいち早く到達しますので、早くにアタリが出やすいエサです。またアワセた際に、割れてこぼれたり、臭いが拡散するから、マスの中の群れを自分のところに寄せる効果があるんですよ」
海上釣り堀に覚えのある人なら、
シラサエビこそ最高のエサだと思っている人も多いことだろう。
「たしかにシラサエビは、活き餌で動く分、見切られにくいのは事実です。口を使わせる能力が高いのは間違いありません。ただ、群れを寄せたり、群れ全体の活性を上げる力はありません。それにどのエサでもありますが、今回はシラサエビがまったく通用しなかったんですよ。雨などで潮が濁ったりすると臭いのないシラサエビは見つけられないのか、途端に食いが落ちますね」
ダンゴに関しては、茶色と黄色の2種類持ち込む。どう使い分けるのか?
林
「食いが立っている場合は、少しでも早くタナに到達させたい。そういう場合は、早く沈む比重の大きい茶色いダンゴ。マダイストロングを使います」
食いが悪くなったら、黄色いダンゴ。
「マダイイエローは、マダイストロングと色や成分の違いもありますが、そもそも比重が違いゆっくり沈みます。スレてきたら、ゆっくり沈むものじゃないと口を使わなくなります」
黄色いダンゴで食わなくなったら、次にムキエビとササミを使う。この2種類は何が違うのだろう?
林
「ムキエビとササミは似たような性質のエサになるけど、この2種類はダンゴに比べて沈むのが圧倒的に遅く、ゆっくりふわふわするんですよ」
その分、口を使わせやすいがバラケたり、臭いで寄せたりする効果はダンゴエサほどではない。また沈むのが遅い分、手返しは悪くなる。
林
「エビはハリにつけやすいから手返しが早い。ササミは柔らかく加工して使うのでハリ付けにちょっと時間が掛かります。なので朝の食いが立っている時間は、エビを優先的に使います。ダンゴエサをどこまで長く引っ張れるかで、釣果の伸びが変わりますね」
この日は林が想定する以上に、ダンゴの食いがよかった。
「持ち込んだダンゴエサがなくなるほどダンゴの時間が長かったのは、久しぶりですね。ちょっと食いが止まったタイミングでシラサエビとアオイソメに変えてみたけどまったく口を使いませんでしたね。前日からの雨で、水が少々濁っているのが影響していると思います。普通ならシラサエビやアオイソメは、ダンゴ以上に食わせる力があるんですが、今日は食いが悪いですね」
ボトムで食わないときに試してみたい中層狙いサイトフィッシングは魚の反応を分析
「底に魚が少ないのかも?」中層に浮いた魚を探すべく、水面に目をこらす林。
「海上釣り堀は透明度の高い場所が多くだいたい水深6mくらいまでは目視することができます」
もちろん偏光グラスはつけていたほうがいい。
林
「朝まずめや放流時、あるいは潮の流れで急に活性が高くなったり、スレていてもネットを意識する魚種なんかは、必ずしも底に固まっているわけではなく、中層に浮いたりすることもけっこうあります」
この日もマダイ、シマアジ、イサキが中層に浮いてきた。それを見て、視認性に優れる黄色のダンゴエサにオモリをつけずにノーシンカーで落とし込む林。静かにマダイが近づいてきてついばんだ。ダンゴが消えた瞬間を逃さずアワセを叩き込む。
この1匹を取り込むと群れが消えた。活性が高いとはいえ連続して釣るのは難しい。小さなパターンをいくつも積み上げて、釣果を伸ばしていかざるをえない。その引き出しの多さが海上釣り堀では釣果を下支えしてくれる。
今度はイサキを見つけ、ダンゴエサへの反応をみる。
ノーマルのダンゴエサへの反応がいまいちだったので、溶けるダンゴに切り替える。これも反応がよくないためバラけるダンゴをいれた。
そのバラけたダンゴで活性が上がり、2投目でイサキを追加した。
林
「日によって臭いに反応したり、視覚的な刺激に反応したりと差が出るので、ダンゴもいろいろなタイプを使い分けると釣果が伸びます」
いつでもは釣れないのが青物時合いは、マダイのアタリが消えた時と放流があったとき
マダイのアタリが途切れたタイミングで林はすぐさまウグイに手を出した
「マダイの反応がよかったのに、突然アタリが途切れるような時は、青物の活性が上がったタイミングというケースがよくあります」
ところが、ウキがなじんで3分もしないタイミングでつぶやく
「あれ?食わないな」
もし、青物の活性が高いのであれば、アジをいれてすぐにウキが激しく動くなどなんらかの反応があるのだがその反応がない。その場合アジを10分も20分も沈めっぱなしにするということを林はしない。
「青物が口を使うときは、すぐに食ってきます。10分とか20分アジを泳がせ続けて青物が食うというケースはなかなかありません」
ちなみに、朝一から青物を狙うこともあまりない。
林
「マダイの活性が高いうちは、まずマダイを釣り切ってしまわないと、青物の活性が上がりません。マダイを釣れるだけ釣って、青物狙いに切り替えるというのが常套手段です」
必殺技として繰り出したのがサイマキ。小型のクルマエビだ。
これをエサにウキ釣りでマスの中央付近を狙った。
竿を高く持ち上げて落とすという誘いの動作を入れたあとに、
ズボッとウキが入り上がってきたのはカンパチ。
「青物は一筋縄ではいかないターゲットです。アジとウグイの使い分けやアジのヒレをカットしたり、カツオの内臓や切り身、カタクチイワシの一匹掛け、イワシを踏み潰したイワシせんべいと、試してみないとどのエサに食うか分かりません」
この日は40匹を超える釣果で終始、竿を曲げ続けた林。
周囲の釣り師と比較しても断トツの釣果だった。
「エサ使いは海上釣り堀においては欠かせない攻略法なので、ぜひいろいろなエサにチャレンジしてみてください」