自然と仕掛が安定するシャープな操作感
軽量オモリを使って違和感なく喰わす
渓流にはヤマメが定位しやすい場所がある。落ち込みの白泡が薄くなる辺り、石裏で分かれた流れが合わさるヨレ、反転流と本流の筋が合わさるヨレ、石前の緩流帯、落ち込みのカケアガリ。いずれも川虫などの餌が流れてきやすいスポットにヤマメは定位している。脈釣りはその筋を見極め、流れなりに仕掛を送り、魚の口もとに的確に餌を流し込むのが面白い。このシンプルかつ繊細な釣りに40年魅せられているのが長谷川哲哉だ。
3月上旬、解禁間もないホームリバーの神流川へ。長谷川にとっては渓開きとなる釣行に同行。手にするのは小継ぎ渓流竿のフラッグシップモデル「がま渓流星煌峰RIV」である。この竿を磨き上げた長谷川は言う。
「振り込みやすく、振り込んだ後は穂先がピタリと止まってブレない。仕掛を流す時もシャンとしているし、持ち重りが全くない。ヤマメ釣りが簡単になる上質な竿です」
北関東は群馬の山間で育ち、幼いころからヤマメを釣ってきた長谷川。その釣り方は、ナチュラルドリフトを基本にする。仕掛には流れに合った最小限の軽いガン玉を噛ませ、流れの筋から外れないようにトレースしていく。
「近年の小継ザオは胴に入りがちなモデルが多いと感じていました。振り込みや合わせた時にドワンと胴が曲がるようなサオです。私は昔からシャープな操作感のサオが好きで、このサオがまさにそう。鋭くコンパクトに振り込めて仕掛を流す時の安定感も違います」
たとえば3B以上の重いオモリを使えば、どんな竿であれ仕掛を飛ばすのも沈めることも容易い。しかし長谷川が多用するG4程度の軽量ガン玉を使う場合は竿の反発加減によって振り込み精度は大きく変わる。星煌峰はシャープな反発力で軽い仕掛もフワリと飛ばせ、ねらいの位置に餌を落としやすい。またブレの収束が速い。ヤマメを釣るために最も大切と言われるのは「餌が踊らないように、目印をブラさずに流すこと」だ。星煌峰は穂先も胴もシャンとしているので誰が使っても仕掛が自然と安定する。
川底を感知する感度がタナの見極めをアシスト
「新しい星煌峰は感度も凄く向上しています。渓流釣りのアタリは目印で取ります。だから魚の反応が手もとにくるような感度は求めていません。ただ、川底を感じる感度は欲しいんです。小さく軽いオモリほど底を感じにくいですが、この竿は小さなオモリがコツコツと石に当たった感覚が分かる。渓流も水深や流れに応じて魚の定位しやすいタナがあり、餌が流れる位置が下過ぎても上過ぎても喰わない。イトの送り加減を見極めるのに感度は高いほうがいいんです」
解禁初期の川は水温も低く、ヤマメの活性もまだ低い。長谷川は流れがトロリとゆるくなる瀬尻や淵尻を中心に探る。そこは多くの釣り人がこぞってねらうスポットゆえ魚がスレるのも早い。よって定位する筋をきちんとトレースできないと口を使わない。
長谷川は最初に入った瀬尻で3投目にはヤマメをヒットさせていた。しかも数尾を連発するのである。場を荒らさないように小型であればすばやく引き抜き長くは遊ばせない。釣り上がるうち8寸のヤマメも掛けた。このサイズも難なく寄せる。やり取りの際に竿が描くカーブは美しく淀みがない。
「操作感、感度、やり取りのいずれかに際立った特徴がある竿ではなく、すべてにおいてバランスがいい。まさしく理想的な小継渓流竿といえます」
ラインナップは5.3m、6.1m、7.1mがある。神流川上野村地区のような川幅が5~10mほどの渓流域で長谷川が多用するのは7.1mである。というのも渓魚はより離れた位置からアプローチしたほうが警戒されにくい。竿は長いほどシャープ感が損なわれがち。長谷川の軽快な操作とやり取りを見る限りその心配は無用である。
違和感なく喰わす〝正攻法〟の釣り方で気配を消してアプローチする長谷川。その姿と星煌峰という竿にヤマメへの畏敬の念が感じられた。