ラグゼスタッフ
勝股 優(かつまた まさる)
23歳で梅農園『勝股農園』を立ち上げ、現在32歳の若手経営者。土日休みもない超多忙な毎日で、梅の仕入れや管理に奔走している。多忙な業務の合間をぬってエギングに出かけるのは、自宅にほど近い激戦区の和歌山県田辺エリア。短時間の釣行ながらデイゲーム・ナイトゲーム問わず安定したアオリイカの釣果を叩き出している。
さよなら。フリーフォール。次世代エギングの主流は
ロッドを立てたテンションフォールだ
ソルトルアーブームと呼ばれる昨今、
中でもエギングは人気が高い。
人気の高さはプレッシャーの高さでもあり、エギングでアオリイカを釣る難しさに四苦八苦している声はあちこちで聞く。皆が皆、ダートさせてからのフォールで抱かせるテクニックを駆使しているわけだが、人と同じことをやれば差がなくなり、スレてしまえば釣果も落ちる。昨今主流のエギングでは、なかなか安定した釣果を出すのが難しくなってきているのかもしれない。果たして、『適当にシャクれば釣れる』時代は終わってしまったのだろうか。
そんな厳しい現状でも、ロッドを立ててエギをフォールさせる独特のスタイルを繰り出す勝股さんは、安定した釣果を出している。そこで秋のエギングの最盛期を過ぎつつある11月上旬、勝股さんに仕事の合間を縫って、勝股流テンションフォールエギングを見せてもらった。勝股さんが提案するテクニックの中でも、特にデイゲームにおけるシャローエリアの攻め方は、誰もが簡単に短時間で釣果を出せるようになるという可能性を秘めている。潮流の変化を探し、テンションフォールで攻める勝股さんのエギングを紐解いてみよう。釣果に悩んでいるあなた、これを読めば釣れないエギングにおさらばだ!!
釣行開始。
朝まづめの一投目、早くも1杯目のアオリイカをゲット
秋も深くなり、太陽が完全に顔を出すのも少し遅くなってきた11月初旬。太陽が水平線から顔を出し始めた6:30頃から釣りをスタートした。はじめに選んだポイントは大きな湾の中にある小さな岬状に突き出た小磯エリア。岬にエントリーしたので磯の先端に広がるディープエリアに投げるのかと思ったのだが、勝股さんは岬の先端には立たず、まさかの岬の手前にある小さなワンドの内側で釣りを始めた。岬の先端は水深が深いが、ワンド側の水深は浅くなっている。勝股さんは小磯からワンドに向かいシャローエリアで釣りを始めた。
「アオリイカは夜間、活発にエサを追い回します。ワンドのシャローにエサを追い詰めて捕食していたイカが、朝まづめなら、まだ、夜を引きずってワンドの中に居座っている可能性がある。その場合は高活性なので釣りやすいです」
そんな個体が居るかをチェックするのがセオリーとのこと。シャローというもののどのくらいの深さなのだろうか。
「岬の先端の深い場所が10mくらい。周囲はそれくらいの水深の場所が広がっていて、今から狙うワンドのシャローが水深2メートルくらいですね」
海底が目視できる驚きの浅さだったが、そんな浅瀬に本当にイカがいるのかと目をこらしイカを探しつつ、納得いかない顔をしている記者に、「むしろ、こういう浅場にこそ、しっかりとサイズのいいイカがいるものだ」と勝股さんは笑う。
まずはエヴォリッジ3号のシャロー。沈下速度を抑えて根掛かりを回避しつつアクションのキレがいいのでシャロータイプのエギを選択した。
ところで、エギといえば実に多くのカラーがある。勝股さんはどんなカラーローテーションをするのだろう。
「んー、正直、視認性がよければ、カラーはそこまでこだわっていないというのが本音ですかね」
カラーにはこだわらない???
一般には暗いうちであれば赤テープ。明るくなるにつれてオレンジ系で金テープなど、カラーに関してはよく聞く定説というものがあり、いわれるがままに信じて釣りをしていた記者はここでも驚かされた。説明もそこそこに釣りを開始。シャローの釣りでは、着水と同時にロッドを立ててラインを張り、ティップに強めのテンションをかける。フリーフォールでは、すぐにボトムに着底してしまうからだ。強めのテンションフォールを主体にしつつ、テンポよくエギをしゃくり上げ、中層から表層にかけて探っていく。
「夜のうちに浅場に餌を求めてやってきて、シャローに居残っているイカは活性が高い。比較的、簡単にエギに反応してくれる。ただし、高活性なイカが多いからといって闇雲にエギを投げるのではなく、目に見えるようなシモリ付近を重点的に探るとよりイカに出会える確率を高くできる」
岸からの払出しの流れがシモリに当たり、その付近に『潮の壁』ができ、イカはそういう所に集まるという。そんな説明をしながらの1投目で約500gのイカをあっさりとヒットさせる。信じられない! いくらなんでも、まさか一投目で釣ってしまうとは。
高活性アオリイカの濃密ゾーンとなる
潮の壁とは?
突如、『潮の壁』という聞きなれない言葉が出てきたことで、困惑している人も多いだろう。勝股さんがポイント選びで最も重要視している『潮の壁』とは、いったいなんのことだろう。潮が障害物(地形の変化など)にぶつかることで、反転流や湧昇流(ゆうしょうりゅう)など潮流の変化が生まれる。勝股さんはデイゲーム・ナイトゲーム関係なく、そういう潮流の変化を探しているという。潮流の変化する場所、あるいは境界。すなわち『潮の壁』にはベイトが溜まりやすく、そこには活性の高いイカがやってくる確率が高いという。そんな1級ポイントを『潮の壁』と呼ぶのだ。
そんな潮流の変化をどのように見つけていけばいいのかと疑問に思われると思う。そこで『潮の壁』を見つけるためにいくつかのポイントを紹介する。
1つは誰が目で見てもわかる『潮目』。これは非常に分かりやすい。写真のように海面にまで変化が現れる大きな壁だ。流れの速さや方向が異なる2つの流れによって摩擦が生じ、その境目にできる横の大きな変化が潮目であり、潮の壁だ。
2つめは『潮目』ほど大きな変化は目で見てわからないが、エギをシャクっているとエギやラインが受ける潮が重くなるポイントがある。そういう付近にはストラクチャーなどがあり、そのストラクチャーに潮流がぶつかることで、湧昇流のような縦の流れの変化が潜んでいるのだ。
多くは目に見えない現象だが、まれに湧昇流が強い場合には、海面に鏡ができることもある。そういったストラクチャーがあり、流れが変化する場所にベイトフィッシュが集まり、アオリイカもやってくる。最高のピンポイントを攻めて結果が出なければ、周囲を探るのではなく、ポイントを見切る。『潮の壁』が分かれば飛躍的に攻略精度が高まり、時間効率がよくなるのだ。
シャローを見切り『潮の壁』を狙って深場へ!まさかのサイズをゲット
満潮からの下げ潮が効き始め、シャローエリアの潮流の変化が朝と比べて小さくなった。勝股さんはすかさずこのポイントに見切りをつけた。
「居残りのイカも居なくなったので、小磯の先端付近で潮が巻いている深いポイントへ移動しましょう」
勝股さんが重視している『潮の壁』を、今度は深場に探しにきたのだ。数投して『潮の壁』がないと見切りをつけて、湾の入口の深場へ面している立ち位置に移動。ここは水深が10メートルほどのエリアで、潮が磯にぶつかり流れが変わる場所。つまり『潮の壁』ができやすいのだ。ここで勝股さんはエギをローテーション。少しでも潮に馴染ませるために3号シャローから3.5号シャローにサイズアップさせた。ボディーを大きくすることで、潮を受ける面積を増やし、潮に馴染みやすくした。釣り方も、先のかなり強めのテンションフォール主体の釣りからうって変わり、エギを安定させるためラインを張らず緩めずのゼロテンションのフリーフォール気味の誘い方に変更した。外洋からのウネリの影響で海面が波打っていて、エギに強めのテンションをかけるとラインが波に引っ張られて、エギの姿勢が安定しなくなるからだ。 それでも勝股さんは完全なフリーフォールはしない。エギにかけるテンションをコントロールするために、竿先を横にしてラインをさびくようにコントロールしている。かなり特殊な釣り方に思われるかもしれないが、フリーフォール主体の釣りより潮流の変化を察知しやすく、アオリイカの居る場所を積極的に探していけるという。つまり深場でも攻めのテンポのいい釣りを展開していくことができるのだ。
このテクニックにはEG X-ultimateのような軽量&高感度の竿を使うことで、潮の重みなどの変化を察知しやすくなる。また、ソリッドティップの恩恵で意外なほど簡単にテンションコントロールができるのでテンションをかけた釣り方でもエギの姿勢を安定させやすく効率よく活性の高いアオリイカを見つけていけるのだ。
エギを潮に馴染ませるように
丁寧に潮流の変化を探していく。
ピックアップ前に足元の駆け上がりに乗せるように優しくエギを置くと、どこからともなくやってきたイカがエギをひったくるように抱く! 激しくシャクっても滑らないきつめのドラグ設定のはずのリールからドラグ音が鳴る。周りのスタッフには緊張が走る。だが勝股さんは、あわてる様子もなく丁寧に竿先を寝かせてファイトを始めた。海面に浮かび上がってきたアオリイカは、かなりの大きさに見えた。波に合わせてランディングをすると先の500gのイカと比較してもかなり大きい。計測すると990g。あと10gで1kgと11月の和歌山県にしては最大サイズの良型だった。デイゲームでこのサイズを釣り上げる勝股さんのテクニックには脱帽だ。活性の高いイカがいる『潮の壁』を探しての釣りと、テンションフォールを自在にコントロールする氏のテクニックが光る一杯だ。
潮どまり前後はディープではなく
シャローを狙う。そのわけは?
9:00を過ぎ、潮が下げ止まった。この潮の流れが悪くなるタイミングでエリア変更を決断。大きく移動し、入ったポイントは深場ではなくシャローだった。
「潮の動きが悪くなっても、シャロー一帯は常に水が動くので高活性なイカがいる確率が高い。朝とは別の理由でシャローエリアに行ってみたい」
いわれてみればその通りだが、朝に入ったポイントよりさらに水深は浅く、僅か1メートルの場所にエントリーした。シャローエリアは流れが生まれるとはいえ、エギは1秒もあれば着底してしまうような浅瀬だ。見渡す限りイカは目視できない。本当にこんな場所にイカがいるのだろうか?勝股さんは3.5号のエギだとすぐに着底してしまい釣りにならないので、サイズを2.5号に落とした。朝まづめのシャローでの釣りと同じく、着水と同時に竿を立ててラインに強めのテンションをかける。テンポよくエギをしゃくり上げ表層を探っていくと、ものの数投で400gのイカをヒットさせた。
短時間で結果を出すのが勝股流とはいったものの、まさか10:30には取材を終了させてしまうとは。これほどスムーズな取材は記憶にない。
勝股流エギングのコツ
勝股さんは、潮の変化する『潮の壁』を探すことで、効率よく活性の高いイカを探すスタイルだ。『潮の壁』、つまり一級ポイントを探して、その時の潮位や潮の動きでシャローと深場を攻め分け、短時間でイカに出会える可能性を格段にアップさせる。特に浅場ではイカが高活性なことが多く、流れや構造物(ストラクチャー)に対して素直に定位しているという。そこで同じ場所にエギを何度も通すより、流れが効いていたり、目に見えるストラクチャーをどんどん撃って、ランガンするのが効率よくシャローエリアでイカを見つけて釣る方法だという。また、テンションフォールを駆使することで活性の高いイカを誘いつつ、スピード感があるエギングを展開することができる。
フリーフォール主体の一か所で粘るようなエギングを考えていた記者には目から鱗。いや、目から墨が出るほど驚きだった。氏のスタイルであれば誰でも簡単に実践でき釣果を出せそうだと錯覚してしまうほどだった。
ロッドセレクト
今回使ったタックルはEG X ultimate 86ml-solid。勝股さんは2.5号から3.5号のディープモデルまで、この1本でこなす。ソリッドティップゆえのもたれ感もなく3.5号のエギをしゃくり上げるにも、フルキャストにも不安感はない。レングスに関して短いと感じる人も多いと思うが、軽量でシャープな使用感のおかげで振り抜きがよく、ロングロッドにも負けない飛距離を出すこともできる。
「ショートレングスのおかげで取り回しがいい。ランガン主体の自分の釣りにマッチします。ソリッドティップの恩恵で意外なほど簡単にテンションコントロールができるので、テンションをかけた釣り方でもエギの姿勢を安定させやすく、効率よく活性の高いアオリイカを釣ることができます。フォールをコントロールする僕のエギングスタイルには欠かせない1本です」
軽量&好感度なので、誰でも潮の重みなどの変化を察知しやすく、『潮の壁』を探すような釣り方も相性がいい。これからのエギングには感度が必須といえよう。
午前中で釣果をしっかり出して終了!
勝股さんの釣りはわずかな時間の中で、ポイントを絞り、狙いを定め、見事な成果を出した。「確実に釣りたい」「短時間で釣果を上げたい」そんな方はぜひ、勝股流エギングを試してみてはいかがだろうか。