究極の胴調子万能磯竿アテンダー
磯釣りのメインターゲットと言えばグレやチヌを思い浮かべる釣り人が多いだろう。
しかし日本海エリア、特に島根県の隠岐や新潟県の佐渡では大鯛狙いの磯釣り師も多くいる。
2002年の発売から、フカセ師に絶大な人気を誇るアテンダーシリーズだが、グレやチヌはもちろん真鯛や青物などでも胴調子の真価は発揮される。
2023年秋に満を持して登場したアテンダーⅢもまた、魚種を限定しない万能磯竿なのだ。
南康史
1969年生まれ。
G杯チヌで前人未到のV4を成し遂げたトップトーナメンター。
チヌに限らずグレやコブダイ、時にはルアーも投げる生粋の釣り好き。
ホームは岡山県で、チヌでゼロウキを用いたスルスル仕掛けを得意とする。
キングの愛称で親しまれるがまかつテクニカルインストラクター。
『せっかくの万能竿だし、隠岐の大鯛でも釣りたいのう』
南の一言で物語は始まった。
2024年4月下旬、アテンダーⅢ1.75号を手に島根県の七類港に降り立った南。松尾丸に乗り、渡る瀬は隠岐の西ノ島”鯛ノ鼻のハギリ“。
名前からわかる通り大鯛の実績の高い瀬で、横目には大神立岩と呼ばれる、これぞ隠岐とも言える大岩が立ちはだかる。
対馬海流が当たり、南から北に抜ける潮が本命潮となるポイントだ。
事前情報では餌取りは少なく、良型の尾長グレやチヌもゲストで来るだろうとのことで、期待が膨らむ。
隠岐の島のポテンシャルに合わせたタックル
ハギリに渡って釣り座に立ち、ざっと海の状況を確認する南。マキ餌を撒く前から餌取りのタカベや尾長やチヌが見えた。松尾丸の船長曰く、ボイルが効きだしたらヒラマサや大鯛も見えるそうで、時たま乗っ込みの石鯛も顔を出す。まさに楽園だ。
そんな豊かな海に、南は大鯛に照準を絞ったタックルを組む。タックルはがま磯アテンダーⅢの1.75号5.3mに道糸4号、ハリス5号3ヒロ、鈎は伊勢尼12号のリアルケイムラを選択、ウキは0号の全誘導で南が得意とするスルスル釣法だ。地元の常連から聞いた情報を元に南なりのタックルを組む。狙うは80UPの大鯛だ。喰ってきたら必ず獲れるタックルセッティングは大鯛のメッカである隠岐島のスタイルだ。
餌はオキアミボイルの素撒き、サシ餌はマキ餌より二回り大きいボイルを使用。
鈎が大きく重さがあるのと目立たせる意味で浮力が高く大きいボイルを使うのだ。
また、少しでも魚が喰うタナを浅くして釣り人有利な条件に持っていく必要もある。
午前6時半、伊勢尼12号にボイルを刺し1投目を投げた。
潮は本命潮が緩やかに流れていて魚っ気もある。朝一から来るかと思った矢先、さっそくウキが消し込んだ。
『鯛じゃなさそう尾長かな』とものの数秒で顔を上げたのは35cmほどの尾長だ。
ハリス5号、鈎12号で喰ってくるポテンシャルに驚かされる。
良い潮が行っているのだろう、再度仕掛けを投入し撒き餌を同調させる。
北に上る潮に乗せて竿2本分ほどタナが入ったころだった、ウキがすっと海中へ引き込まれた。
アワセが決まりアテンダーⅢが心地よく曲がる。
『お、こんどはええ型じゃ、尾長やけど竿を曲げてくれたら楽しいな』
そういいながら引きを楽しみつつ危なげなく40㎝越えの尾長を釣りあげた。
アテンダーⅢは粘りとパワーもあるが40cm強でも綺麗に曲がり込む。
釣り味の良さに南はおもわず『今度1.75号でグレ釣りも楽しみたいな』と。
しかし、ハリス5号の鈎12号にこうも尾長が喰って来るのかと驚かされる。
それが隠岐のポテンシャルだ。
グレに狙いを絞って仕掛を落とせばもっと釣れるのだろう。
潮が行かない昼に起きた
“一撃笑劇”
朝の本命潮が効いてグレも連続で喰い、このまま大鯛もと思ったが..
そう甘くはなかった。
徐々に潮が緩み、ついには止まり、反対向きの潮が流れだしてしまった。
こうなっては喰わない。
南も瀬際を釣ったり、思いっきり沖に流したりと試行錯誤するが海からの反応は皆無だった。
ただ辛抱強くボイルを撒き、魚がつくことを祈る時間が続いた。
昼をすぎた頃。『アレは..大鯛か、いやヒラマサじゃ』と南。
辛抱強く撒き続けていたボイルに、なんと1mを裕に越え1m20cm、15kgはあろうヒラマサが付いたのだ。
足元にボイルを撒くと夢中になって拾い喰っている。
見えている魚は釣れないと言えど、狙ってしまうのが釣り人の性。例にもれず南もまたその一人だった。
『潮いかんでダメやから、怖いけどアレ狙ってみようか』
そういってウキ下を1ヒロまで浅くした。
しかし、15kgはあろうヒラマサの存在感と言ったらとてつもない。マキ餌に群がるタカベも一瞬で岩陰に隠れ、一匹で悠々とボイルをついばんでいる。
マキ餌にサシ餌をしっかり同調させて、サイトで狙う南。
『喰え!喰え!あー惜しい』
そういったやりとりが何度か続いた。本当にサシ餌に喰って来るのか、そう思った矢先、
『喰った‼』
その声と同時に凄まじい勢いで糸が出ていき、アテンダーⅢがぶち曲がる。
レバーブレーキを調節し一定の角度を保ってプレッシャーを与え続ける。しかし、軽くメーターを超えたヒラマサの引きは尋常ではない。
150mのラインなんてあっという間に出し切ってしまいそうな勢いで走り続ける。
『やばい、スプールの糸が無くなる』
ただただ南は竿を絞り込んで耐えていた。すると、あわやライン無くなると言うところでヒラマサの動きが少し和らいだ。
そうファーストランを耐え忍んだのだ。さあここからが勝負、アテンダーⅢ 1.75号の胴の粘りとパワーでグイグイと浮かせる。
『コレは獲れるかも知らんな』
その一瞬の油断が命取りだった。
命が掛かっているヒラマサが猛烈なセカンドランをした。
『あかん、ラインが擦れよる、あ..』
惜しくも根ズレで切れてしまった。今回はヒラマサの勝ちだ。
しかし特大魚との勝負を楽しんだ南は清々しかった。
『これであんだけファイトできたら大鯛は獲れるじゃろ』と満足そうだった。
夕まずめに本命潮が流れ「いざ尋常に勝負」
午後5時、ようやく大神立岩に向かって流れる本命の潮が流れ始めた。
昼には見えなくなっていた尾長やチヌも見えだし、魚っ気が出てきている。ここからが勝負の時間だ。
撒き餌と刺し餌を流れにのせてどんどん流し込んでいく。
竿2本半ほどだろうか、タナが入った時、バチバチバチッとラインがはじけ飛んだ。すかさずアワセを入れ、魚が掛かるがすんなり浮いてきて、釣れたのはイサキ。しかしこの魚もまた潮が悪いと喰ってこない魚、喰ってきたということはチャンスなのだ。
再度流れに仕掛を入れこんでいくと、再び竿2本半のタナでラインがはじけ飛んだ。アワセと同時に強烈な引きを見せる。
ようやく来た待望の大鯛だ、そう確信した。
流れに乗って強烈な引きを見せるが、南も一歩も譲らない。アテンダーⅢを絞り込み、魚が引いている間は耐え、引きが収まったら寄せてくる、手本のようなファイトでじわじわと魚との距離を詰める。
潮が良くなった終盤でようやく掴んだ千載一遇のチャンス、南の“絶対獲る”という想いがファイトからも感じ取れた。
大鯛も手前の瀬際まで最後の抵抗をして見せたが、最後は南の勝ちだ。
タモに収まった大鯛はハチマルには届かなかったが乗っ込みが絡んだグッドプロポーションな魚だった。
何時間もねばりようやく手にした隠岐の大鯛に南も安堵の表情を見せた。
撤収間際、本当にラスト1投という場面で見せた南の勝負強さにG杯V4のキングたるゆえんを感じる釣行であった。