谷口輝生のナイロンハリス大鈎釣法の極意
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谷口 輝生
京都市在住で若い頃から親子でのアユトーナメントに参加し、20代にして、2005年度開催の「G杯争奪全日本アユ釣り選手権」でアユ競技会の頂点に立つ。
以降も精力的にトーナメントに参加し、2022年報知オーナーカップで優勝。
トロ場の泳がせから急流での引き釣り、チャラ瀬など、どんな釣り場もオールマイティーにこなす実力派。パターンにハマった時の入れ掛かり状態は圧巻。
大鈎ナイロン釣法とは
大鈎ナイロンと聞けば、なんとなくこの釣法の想像がつく方もいるかもしれない。
名前の通り、ハリスにナイロンラインを使い、錨に大きめの鈎を選択する。
しかし、実際に谷口の錨ケースを見るときっと驚くだろう。
取材日は2023年5月19日・日高川龍神エリア。
本解禁を翌日に迎えたまだ初期も初期の時分である。
錨ケースの中で一番小さい鈎は7.5号、大きい鈎は8.5号である。
恐らく、多くの人は解禁当初6号か6.5号の鈎をしている中、この号数感で釣りをしているのである。谷口曰く、よっぽど鮎が小さくて大きい鈎で泳がない時以外は7.5~9号で鈎を選択するそうだ。
大鈎ナイロンハリスの狙い。
そこには谷口の鮎釣り理論
“鈎が野鮎に巻き付くように掛かる”
ということがある。
前項でも話した通り、軟らかいナイロンラインに大きい鈎を使う。
すると鈎が下に垂れるのである。ここにこの釣法の秘訣が隠されている。
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奥:フロロハリス6.5号の4本錨
手前:ナイロンハリス8.5号の4本錨
長さは同じだがこれほどまでに垂れ方が違う。
ではその肝は何なのかという話だが、その前に友釣りが成り立つ仕組みを簡単に書こう。
皆さんご存じの通り友釣りは、鮎の縄張り習性を利用している。
他の鮎が自分のテリトリーに入ると、侵入してきた鮎にアタックし追い払う。
そこでオトリ鮎の尻鰭付近にサカサ鈎を打ち、掛け鈎を付けることで鮎を釣ることができる。
一般的に追い払う際に、斜め後ろ下方向からアタックすることが多いと言われているが、実際に観察してみると、言われているように下後ろからアタックすることが多い。

大鈎ナイロンハリスを使う理由
下からアタックされた時、小鈎フロロハリスだとオトリと共に浮き上がってしまう。大鈎ナイロンハリスだと下に垂れ下がっているため、アタック時の浮き上がりを最小限に抑えることが可能になる。(下図)
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下からアタックする時、いきなり鈎のフトコロに魚がスッポリ刺さるということはまずない。オトリ鮎に当たったりハリスに当たったりするはずなのである。
前図でもあるように追いかけられた時やアタックされた時、大鈎は鈎が重く浮き上がりにくくなるため、ハリスに鮎が当たりやすい。
大鈎で軟らかいナイロンハリスだからこそ、谷口の理想である巻き付くように鈎掛かりする、が成り立つ。
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サカサ鈎の打ち方
谷口のこの釣りを成立させるには、サカサ鈎のセット法も重要になってくる。
基本のセット位置はイラストのAの位置。
水深の浅い場所では根掛りを防止するためにBの位置にセット。
水深が深い場合や、群れ鮎の場合はより垂らすことを意識しCの位置にセットする。
ポイントは必ずオトリの尾鰭よりも掛け鈎をだすことである。
するとAの位置に比べCの位置ではよりハリスを長くしなければ尾鰭からは掛け鈎は出ないので、余計ハリスが垂れやすくなるということである。
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谷口のスタメン鈎
谷口は基本的に4本錨以外を使用しない。
この日錨ケースに入っていた鈎は、T1要R7.5~8.5号、大鮎要8.5~9号、てっぺん7.5~8.5号であった。
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基本的に要Rと大鮎要をスタメンで使用する。大鮎要は要Rより太軸設計なので同号数で約17%重くなる。この二種は川の流速で使い分ける。また、要Rで掛かりが悪い時はてっぺんを使用する。
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操作方法・仕掛
谷口は基本的に泳がせ釣りがメインだが、オバセを大きく取ることはせず、糸を張り気味に操作する。鈎が大きいのであまりに自由に泳がせてしまうと根掛かりが多発するからだ。
また水中糸はナイロン0.1~0.15号を使用することが多い。ナイロン糸は、メタルラインと違い比重が低いので、引っ張っていても水中で糸ふけが出やすい。糸がふわりとした瞬間、オトリは潜り、そのリアクション的動きで野鮎を掛けやすくする。またナイロンラインはオートマチックに誘いを入れることが可能になるのだ。
この釣りを挑戦したい方に
今回ご紹介したナイロンハリス大鈎釣法に是非挑戦していただきたい。
特に、バラシの多さに悩んでいる方は是非ともチャレンジしてほしい。巻き付くような鈎掛かりを体感してもらうことができるだろう。しかし、最初から谷口と同じようなタックルセッティングで釣りをすると、慣れないうちは根掛りが多発するかもしれない。
今フロロハリスを使っている人は、ナイロンハリスに。元々ナイロンハリスの人は、鈎の番手を1つ上げる。このひと工夫が今後のあなたの鮎釣り人生に革命を起こすかもしれない。