鈎をのまれても
根ズレをしても切られない
の真骨頂
ラストを飾る
デカ尾長
西森康博
で挑む
高知県鵜来島・水島2番
一筋縄でいかないという言葉が軽く感じられるほどに難しい高知県沖ノ島&鵜来島海域のデカ尾長。ましてや60cmオーバーともなると、手にする可能性は限りなく低い。
しかし、西森康博は成し遂げた。アテンダーⅢ2号のプロモーション撮影ラスト釣行で、最後の最後に61cmをゲット。ずっぽり鈎をのみ込まれ根ズレを繰り返すなかで、竿のポテンシャルをフルに発揮しての1尾だった。
にしもり・やすひろ
グレの鬼才、松田稔に学んだ尾長釣りに磨きをかけ、高知県沖ノ島と鵜来島のスレたデカ尾長を手玉に取るエキスパート。
67cmを自己記録に、これまで仕留めた60cmオーバーは40尾を超える。
最終プロトで
59.7cmを釣ったあと
尾長の姿が見えないロケが続く
アテンダーⅢ2号の最終プロトを手にしてから最初の撮影となった2023年12月下旬に、水島2番船着きのデベソで59.7cmの尾長グレを仕留めた西森。ぜひともロクマルを手にしてほしいという期待に応えようと、年明けからも鵜来島にアタックするものの、尾長グレの姿が見えないロケが続いた。マキ餌に浮いてくる尾長グレに照準を合わせ、サシ餌を口にした瞬間に掛け合わせるサイトフィッシングがこの海域のスタイル。尾長グレが見えなければ始まらない。
さらには水島まで来たものの、南からのウネリが高く、北西の爆風による風波も加わって渡船を着けられずに渡礁を断念。「長年水島に通ってるけど、こんなんは初めてよ」という出来事もあった。
スケジュールの都合上、残されたチャンスはあと1回。満を持してのアタックは5月下旬。昼釣りと夕釣りの通しで勝負をかけることになった。
昼釣りで渡礁したのは2番のチョボ奥。曇天無風のベタ凪で、コンディションは上々だ。
西森のタックルは、アテンダーⅢ2号の5.3mに道糸2.75号、ハリス2.75号、ウキは5-5で直下にジンタン4号を一つ。鈎はMシステム尾長速攻の8号。ウキ下は1ヒロだ。
ウスバハギは尾長の吉兆
一瞬のチャンスに49cm
午前6時30分に釣りスタート。マキ餌を撒くと、わっとイサキが集まってくる。サシ餌のボイルオキアミを触ってくるため、デカ尾長狙いでは厄介な存在。イサキの下にチラっと尾長グレは見えるものの数は少なく活性もイマイチだ。
1時間が経とうとするころ、前方に見える水島1番との間で突然青物がボイルし始めた。潮が変わったのだろう。マキ餌を撒くとどこからともなくウスバハギが現れ、ほどなくして多数の尾長グレが浅いタナへわらわらと浮き始めたのだ。
マキ餌に反応する尾長グレをめがけてアンダースローで仕掛を投入。ウキの手前に落としたサシ餌がゆっくりフォールしマキ餌の中に紛れ込んでいく。スーッと仕掛を張った次の瞬間、微かなウキの変化にアワセが決まる。アテンダーⅢ2号が尾長をとらえた。
ジョイントの存在を感じさせないウルトラアクティブサスデザイン搭載のアテンダーⅢ2号5.3mの曲がり。
粘り強い曲がりと反発力で鈎をのまれた際のハリス切れを軽減する
竿尻を下腹に当てて締め上げると、ウルトラアクティブサスデザインによるジョイントの存在を感じさせない美しい曲がりが、がっちり引きを受け止める。執拗な抵抗にも余裕のやり取りで取り込んだのは49cmの尾長グレだった。
「昔からウスバがきたら尾長の活性が上がるっていうけど、その通りやったね。水温が上がってきているから、サイズの割によう引いたよ」
アンラッキーなロケが続いていただけに、ほっと一安心といったところか。それにしても一瞬のチャンスを一撃でものにするのはさすがである。
硬いのではなく粘り強い
糸に優しく走られにくい2号
弁当船から夕方まで水島2番の奥の奥を攻めた
9時過ぎの弁当船で釣り人が磯替わりし、水島2番の奥と、奥の奥が空いたことから西森は奥の奥に移動。この狙いが的中した。
海面に浮いたミドルクラス。水温が20度を超えて元気いっぱい。強い引きを楽しませてくれた
一面にわいていたイサキの数が少なくなった11時56分に50cmクラスを仕留めると、12時20分、30分、43分に46、47cmのミドルクラスを連発。午後1時8分には50cmクラスをタモ入れ寸前にハリ外れで逃したものの、10分後にリカバリー。
1時間半ほどの間に5尾の尾長グレをゲットするという圧倒的な喰わせ力を見せたのだ。
45〜50㎝を8尾仕留め「もう十分やない」と笑みがこぼれる西森。このあとにドラマが待っていた
「イサキがたくさんおるときは、サシ餌に反応しにくいようにマキ餌のボイルを多めに撒いて喰わせること。グレにもボイルの味を覚えさせんといかんし。それで段々ボイルの量を減らしていくとグレは浮きやすくなるね」
マキ餌は赤アミ(アミエビ)にオキアミのボイルをまぜて使うが、このように状況に合わせてボイルの量を調整することが大切。また、尾長グレがたくさん見えてきたときも、ボイルを多くしたり、少なくしたり、アミエビだけにするなどパターンを変えて撒くことで、スレた尾長グレの目先を変えてヒットにつなげるのだ。
サシ餌のボイルはバッカンの中でアミエビの汁に浸かったものを多用する。
「アタリを待っていて体がピクッと反応しているのは、サシ餌を口にした瞬間に離されたとき。そんなときでもアミエビの汁に浸け込んで身が軟らかくなったボイルは、離すまでの時間が少しでも長くなる」
また、サシ餌を口にした瞬間に出る微かなアタリを掛け合わせるのが大基本だが、それでもまったく掛からないときにはアワセのタイミングを変えることも有効だという。
「離したサシ餌に反応する別の魚がおることもある。同じことを繰り返さずにダメなら何かを少し変えてみないかん」
このように攻略の引き出しを明かしてくれた西森だが、これだけ尾長グレが獲れている大きな要因は、やはり竿のポテンシャルだという。
「足場が高いところでは道糸が風の影響を受けやすいので、穂先を海面につけられる5.3mが使いやすいね。5mに比べて少し長い分、取り込みもしやすいように思う」
「今日は尾長の活性が高い分、何尾かは鈎をのみ込んどったね。尾長の場合、魚を浮かせてきてウキが見えるぐらいのところからすごい突っ込むやん。このときに手で引っ張って竿で魚を持ち上げようとすると、ハリをのみ込まれてたらよく切れる。竿で持ち上げるのではなく、竿の反発力だけで浮かせるようにすると、のみ込まれていても獲れることが多い。
アテンダーⅢはゴムのように引かれたら曲がり、止まれば戻してくる反発力が強いから魚を暴れさせずに浮かせてくれる。2号の竿は硬いんやなくて1.75号よりも粘り強いんよ。だから、糸に負担をかけにくいうえ魚にも突っ込まれにくい。それが取り込み率のアップにつながってる」
魚のサイズに合わせて竿が適応力を発揮して楽しく楽に獲らせてくれるのもアテンダーⅢの大きな特徴だ。
2号の曲がりと反発力に任せ
竿が獲らせてくれた1尾
夕釣りもそのまま2番の奥の奥で続行となり、午後2時と3時過ぎにミドルクラスを追加。夕方の時合いに期待が高まる午後4時、西向きにのびるサラシの先端で激信をとらえた。しかし、直後に足を滑らせて体勢を崩してしまった。竿からテンションが抜けてバレたのかと思いきや、魚は付いている。
体勢を立て直して反撃に出る西森。とはいえ竿をぐいぐい締め込むのではなく、いつも以上に優しくホールドし竿の曲がりと反発力に任せたスローなやり取りだ。
西森の表情と竿の曲がりから、これまで以上のサイズと分かる。
魚の引きに追随しワンピースロッドさながらの美しい曲がりを見せ、止まるやいなや力強く起こしてくるアテンダーⅢ。起こしてきた分の道糸を素早く巻き取り、魚との間合いを詰めていく。釣り人の所作も竿の曲がりも一切のムダを感じさせない美しいやり取りだ。
やがて海面にウキが見えてきた。しかし、その下に姿を現したデッカい尾長グレは、我に返ったかのように反転して突っ込んでいく。そこからの西森は道糸を巻くのをやめて、のべ竿で魚をいなすように竿の曲がりと反発力で魚の体力を奪っていく。
やがて尾長グレが海面に横たわった。仲間の差し出すタモに収まる勝利の瞬間、磯の上には歓喜の声が響く。
強靱な粘りとパワーが導く
勝利の瞬間
ウキが見えたところから執拗に抵抗を繰り返したデカ尾長が仲間の差し出すタモに収まった。勝負あり。
やり取りを見守っていた磯上のスタッフから歓喜の声が上がった
計測すると61cm。
筋肉質で精悍な尾長グレはノドの奥までずっぽりと鈎をのみ込んでいた。
尾ビレが大きい筋肉質な61cm。アテンダーⅢ2号のデビューを飾るメモリアルな1尾だ
ノドの奥までがっぽりのみ込んだ鈎を見つめる西森。粘り強い竿の曲がりがハリスをしっかり守ってくれた
「足が滑って余分に糸を出しすぎたね。何回も磯に糸が当たったし、鈎をのみ込まれて獲れたのは、竿が叩かないから。歯にハリスが擦れても、根ズレをしても竿が粘るので切れにくい。これが粘りのない硬い竿やとテンションが変わって張ったときにパンと切れることが多いからね。アテンダーⅢ2号の粘り強さとパワーが獲らせてくれた1尾やね」
20年以上にわたり毎シーズン、ロクマル尾長を仕留めてきた西森だが、今期はついにその記録が途絶えようとしていた。
しかし、この61cmで記録を継続。そして、アテンダーⅢのプロモーションでは1.75号で60.2cm、2号で61cmという快挙を成し遂げ、竿が秘めたるポテンシャルの高さを存分に披露してくれたのだった。