『粘りの神髄』
ウルトラASD
粘るがまかつ竿の根底にある
アクティブサスデザイン(ASD)の存在
長尺な竿の宿命として継ぎ目の存在がある。継ぎ目では、当然、素材同士が重なり合っている。重なるということは、その分、分厚くなるということで、硬く頑丈なものになる。頑丈で折れないならいいことのように思うかもしれないが、曲がらないのであるから竿としての機能をなしていないのはいうまでもない。
問題なのは、継ぎ目の部分だけが分厚いのであって、継ぎ目の上下は普通の厚みなのである。これでは継ぎ目の部分だけがあまり曲がらない、いびつな弧を描く竿になってしまう。形のいびつさは、力の伝達がスムーズにいかないことのあらわれでもある。
負荷に対する支点移動が継ぎ目で跳ねるようになると、魚による叩きやバタつきが発生するようになる。この問題にいち早く気づいていたがまかつは、古くから曲がる継ぎ目をロッドデザインに取り入れてきた。「強い、曲がる、切れない、折れない」「巨大魚を手中にできる」と各地のコアアングラーから称賛を得た背景には、実際に他社の竿との設計上の違いがあったのである。
やがて、その手法をアクティブサスデザイン(ASD)と名付けたわけだが、ある日突然生まれた新技術ではなく、もともとがまかつに存在していたものであり、粘りの根拠を科学的に解説するためにあえて名前を付けた経緯がある。
不可能にチャレンジし続ける
がまかつの物作り精神
がまかつスピリットを言葉で表現するならば『不可能を可能にする』、『挑戦の先に成功がある』このふたつに尽きる。この言葉を胸にASDに満足することなく、さらなる理想を追求し研究開発がなされてきた。
それが2011年、アテンダーⅡで日の目を見ることになる。がまかつが生み出した全く新しい構造こそが、スーパーアクティブサスデザインである。目指したのは、よりスムーズな力の伝達であり、継ぎ目自体の曲がり込みである。構造を大きく見直し50%、つまりこれまでの半分に段差を減らすことに成功した。もちろん、十二分に強度は確保されている。これにより、飛躍的にスムーズな継ぎ部の曲がりを手に入れ、胴調子や粘りといったワードが磯釣りの新常識として定番化していった。
あれから10数年。革命ともいえるカーボン素材の躍進があり、さらにがまかつのオーダーによって生まれた世界で最高クラスに強いロッド用カーボンプリプレグの極薄材を手にしたことで、ASDは格段に進化をとげることになる。節の最後尾に当たる部位のさらなる肉薄化と篏合部への衝撃吸収材の併用。スーパーASDをも超え、継ぎのないワンピースと見まごうばかりのスムーズな曲がりを手にしたこの機構はウルトラASDと名付けられ、アテンダーⅢへと搭載された。
記録魚とのやり取りで鮮明化する
ウルトラASDの恩恵
果たしてウルトラASDは、実際の釣り場でどんな威力を発揮するのか?
例えば記録級の獲物と対峙した際、強烈な突進に引き倒され、のされたはずのその竿角度でさえ、粘りを発揮し、極太のゴムが収縮するかのように柔軟に突進を受け止めると同時に体力を絞りつくす。竿角度45度まで倒した状態での溜めは、魚に掛かる負荷が桁違いに大きくなる。必然、弱るのが早く、反撃のチャンスさえ奪いさる。スーパーからウルトラに進化したことで、その性能の底上げが体感できるほどに強化されている。リールシートよりも下部、竿尻から曲がりこもうとする特性からも、進化の度合いは体感できるであろう。この角度で竿が竿として最大限に機能できるものは、存外、世に少ないものである。
アテンダーⅢから始まる新たなる潮流はがまかつの竿においてやがて日常になり、常識として根付いていくことだろう。このウルトラASDをいかにして過去のものとするのか、早くも挑戦の日々が続いている。物作りに終わりはない。