遠投カゴ釣りとは?
ルアー釣りよりも確実に、しかも数もたくさん釣れると今ふたたび大注目されている遠投カゴ釣り。堤防から、砂浜から、磯から遠投すれば色々な魚が釣れます。
遠投カゴ釣りではアジ、サバ、ソーダカツオ、イサキ、イナダ(ハマチ)などがメインターゲットとしてお手軽に狙えますが、実はタナを底付近にすれば警戒心の高い大型の真鯛やグレ、ブリなども狙えます。そんなロマンの詰まった遠投カゴ釣りのイロハを紹介します。
鷲尾純
(わしお・じゅん)
1972年生まれ。
G杯(グレ)全国大会にも出場経験がある本格派で、夏は伊豆半島のカゴりにも足を運ぶ。また、釣具チェーン店の副店長として磯釣りだけでなく、鮎釣りや船釣りなど幅広いジャンルに精通している。
今回の釣り場は静岡県伊豆半島の沖堤防。伊豆周辺はカゴ釣りのメッカでこの釣りをされている釣り人も多いエリアです。そんな遠投カゴ釣りのハウツーを鷲尾さんに聞いてみました。
カゴ釣りに使う道具ってどんなモノ?
まずは遠投に最も大事な道具の竿とリール。
記者
竿とリールはどういったものを使うのですか?
鷲尾さん
竿は3〜4号の磯竿(ベイトリールモデル)を使うことが多く、遠投カゴ釣りの専用モデルもあります。今回使用する竿は、がまかつYouTube【がま磯カゴ アルティメイトスペック試投会~飛距離150mへの挑戦~】で飛距離159mの大記録が出た“がま磯 カゴアルティメイト”を筆頭に、大人気の“がま磯カゴスペシャル4”と、万能的に使える“がま磯 アルデナ遠投B“を用意しました。
鷲尾さん
リールは本格的なカゴ釣りはベイトリールを使います。アンバサダーの6500番が標準機としてありますが、ナイロン6号を200m巻けるものを使います。スピニングリールでもできますよ。その場合道糸はPEを使うことが多いですが、PEラインの下に水深分(約10m~20m)のナイロンライン(6号前後)をいれます。PEラインだとどうしてもウキ止めがズレちゃうんですよね。ルアー釣りで言うとロングリーダーと呼ばれているものですね。
次に仕掛けや小物、餌などについても聞いてみました。
記者
仕掛けはどんなセッティングがいいですか?
鷲尾さん
遠投するので、ウキは羽の大きいものが見やすいですね。飛距離を伸ばしたい場合はスリムなものを使うといいですよ。
鷲尾さん
天秤はL字型が有名ですが、私はストレート天秤を好んで使っています。でも、これは好みですね。
カゴの選び方はウキが15号の場合、カゴも15号を選んでいただくと問題ないですね。うねりが大きい時はカゴが波で沈んでしまうので12号とかに軽くすることもあります。でも、ウキの浮力は極力小さい方が魚が違和感なく喰い込んでくれますね。浮力を多めに残した場合でも、カゴ釣りは魚が咥えてしまえばウキがシュパっと入るので、そこまで繊細にしなくても楽しめますが、ウキの浮力をギリギリまで減らしてウキが抵抗なく沈むようにすれば釣果は上がると思います。
鷲尾さん
ハリスと鈎は狙う魚によって使い分けますね。今回はイサキをまずは狙いますが、何が掛かって来るかわからないので、少し太めのフロロカーボン3.5号を2~3mとっています。ハリスは短いとカゴから餌が出たらすぐにアタリも出るので手返しも良くなりますが、カゴと鈎の距離も近くなってしまうので魚へのプレッシャーにもなってしまいます。まき餌とさし餌を潮にゆっくりなじませたい時ハリスは長くとりますね。
仕掛けのハリスを細くして繊細に狙いたい場合、ハリスをいたわりたいのでゴムヨリトリ(ゴムクッション)を入れます。鈎はまずはスパイクチヌの2号を使います。ケンが大きいので遠投してもオキアミがズレにくいのがいいですね。
ここで見慣れないものがタックルボックスから出てきました。
記者
鷲尾さんこれはウキ止めですか?
鷲尾さん
ゴムタイプのウキ止めですよ。糸タイプよりもズレにくいのでカゴ釣りには必須です。タナは浅い水深からどんどん深くしてもいいですが、ダイブサインのような水深計測アイテムを使うと楽ですね。初めての場所だとよく使います。ここの水深は沖堤防なのでかなり深いですが、まずは撒き餌で浮いてくるイサキ狙ってウキからカゴまで2ヒロのタナでやってみます。ハリスも2mとっているので、水深5mの中層を狙っている感じですね。
カゴ釣りに使う餌とは…色にビックリ。
記者
餌はアミエビですか?それともオキアミですか?
鷲尾さん
生のオキアミを使います。半解凍ぐらいにしていると使いやすいですね。 量は3kgあれば1日できますよ。これに煙幕効果の高い集魚剤をまぶしてつかいます。このまぶすっていうのが大事ですよ。混ぜてこねてたらだめです。エサがカゴから出にくくなってしまうのでふりかけのようにパラパラとまぶすだけで十分です。オキアミ1つかみに対して大さじ1杯分ぐらいですね。
鷲尾さん
今回は遠投メガブルーという集魚剤を使いますが、グレパワーV9とかでもいけますよ。私はこのブルーが好きで良く使います。見てくださいこの青。すごいでしょ(笑)
なんと、オキアミが鮮烈な真っ青に!本当にこれで釣れるのか?と疑問に思うほどでした。
鷲尾さん
ハリスはしっかり伸ばしてクセを取ってやると絡みづらくなります。市販のセット仕掛けも使う前に伸ばしてクセを無くしてから使うといいです。
さて、タックル準備も終わりいざ釣り開始。と思いきや、鷲尾さんが体操しています。
鷲尾さん
カゴ釣りは準備体操した方がいいですね。結構体を使うので、しっかり体をほぐしましょう(笑)
餌の入れ方について尋ねてみました。
鷲尾さん
まき餌はカゴにギュギュっと詰め込まずふわっと入れてください。カゴに溝があるので、そこにハリスが来るようにして、さし餌もカゴの中に入れます。この時カゴの真ん中にある芯に鈎がかかりやすいので、鈎先が外を向くように入れてください。
釣り開始、狙うべきポイントは?
そしていよいよ一投目。
鷲尾さん
まずは軽く投げてみますね。
はるか沖100mほどに着水するウキ。
軽く?この飛距離で?と思うほど飛んでいましたが、確かに軽く投げていました。
鷲尾さん
カゴアルティメイトは反発力が強く、竿が投げてくれているという感じで勝手に仕掛けを飛ばしてくれます。
記者
遠投してどういったポイントを狙うといいのでしょう?
鷲尾さん
今回は堤防での釣りになるので狙いのポイントは潮目や沖のカケアガリ(ブレイク)になりますね。磯だとシモリの周辺なんかも狙ったりしますよ
記者
目安の飛距離は100mと聞いていますが、タックルが良いと初心者でも軽く飛ぶそうですね。
鷲尾さん
飛距離はやはりアドバンテージになりますね。狙える範囲が一気に増えますし、他の釣り人が届きにくいところって魚もフレッシュなんです。
記者
ウキが着水してからどれぐらい待つといいですか?
鷲尾さん
魚の活性や波の高さにもよりますが、大体5~10分ほどですね。波があるとカゴの餌が出やすいので早く回収します。他にも1人の時は餌をはやく効かせたいのでテンポ良く投げ直しますね。釣り仲間がいたらみんなで餌を撒くのでゆっくりでも大丈夫です。
そして2、3投し、しばらく待っていると、あれ?海面にウキが無い⁉
鷲尾さん
来ましたね~!なんでしょう?青いですよ⁉イスズミでしたね。餌取りですが引き味はいいですね。
鷲尾さん
仕掛けが着水してウキが立ったら、竿をあおるとカゴの中の餌が良く出るので魚も寄ってきやすいです。
そういって竿をあおると、すぐにウキが沈みました。
鷲尾さん
おお、早速です。今度はなんでしょう⁉ 茶色いですよ。これは美味しいやつですね。あげますよ~!
ここで釣れたのはメインターゲットである良型のイサキ。
鷲尾さん
これは本命ですね。釣れてよかったです。
鷲尾さん
タナを上げるとソーダガツオは釣れると思うのですが、中層~底付近にすると何が釣れるのかわからないのも面白いですね。
※ここで遠投カゴ釣りの注意点
鷲尾さん
遠投カゴ釣りは遠くが狙える分、糸がよく出ているので回収に時間がかかります。なので船の往来に気をつけないといけないです。船が近づいてきたなと思ったらこっちに来てなくても、回収した方がいいですね。
両軸リールでの投げ方と遠投のコツ
記者
鷲尾さんの釣りをみていると100m前後のはるか遠くのポイントにも関わらず、キャストが正確で毎投同じポイントに着水してますね。はるか遠くのポイントなのにこの正確性、まるでスナイパーみたいです。
鷲尾さん
カゴで餌を一定のタナでまいているので、同じ場所に投げ続けることで、ポイントを作ってあげることもできます。それをサポートしてくれるのがカゴアルティメイトですね。投げてみますか?
ここで記者も少しこの釣りを体験させていただきました。
鷲尾さん
ブレーキは強めにしているので思いっきり投げていただいて大丈夫ですよ!着水の瞬間にパッとサミングしたらバックラッシュは起きないです。
記者
投げるとき竿はどんな感じで持ったらいいのでしょう?
鷲尾さん
左手はリール、右手は玉口の少し下の所を持ちます。この時右手の親指でラインももってください。そしてリールが下向きになるように構えて、押し出すように大きくキャストしてみてください。こんな感じです。
そういわれ、緊張の初ベイトタックルで遠投。
記者
こんなに爽快に飛ぶんですか?今バックラッシュが怖くて全然力いれてなかったのに、70mほど飛びましたよ。
鷲尾さん
楽しいでしょ(笑) 投げているだけで気持ちいいですよね!
今ソーダガツオが回遊していて、タナを浅くすると釣れると思うので浅くしますね。
そしてタナを1ヒロぐらいにしていただき、エサも付けていざ二投目。軽い力で気持ちよく飛んでいくので、おもわずニヤケちゃいました。竿をあおりカゴから餌を出すと、あおって沈んだウキが浮いてきません。
鷲尾さん
それ喰ってますよ。アワセてください。
記者
来たー。やばいこれはハマっちゃいます。こんなこともあるんですね。
鷲尾さん
よくありますよ。魚の活性が高いとカゴからまき餌とつけ餌が出た瞬間に喰ってきますね。
ソーダガツオの疾走するような走りを思う存分楽しみ抜き上げる。
開始5分、すっかりこの釣りの楽しさに魅了されてしまいました。
記者
ところでベイトタックルで向かい風や横風が強くなってバックラッシュするときの対処法を教えてください。
鷲尾さん
風が強くなってきてバックラッシュが起きるようになったら、ブレーキを強くして、強めに振るといいですよ!カゴが重いので、横風が強い時は振る力に頼ってブレーキは閉めちゃってください。
こういう風の強い時はほんと、カゴアルティメイトの細身のブランクが強味ですね。 普通細身にしちゃうと、捻れやすくなったり腰が無くなるんですけど、T1100GやM40X、PCSの恩恵もあって、まっすぐ飛んでいきます。投げているだけでも楽しいんです。これに加え、いろんな魚が釣れているのでいいですね。
カゴ釣りの新スタイル⁉キビナゴをエサに一発大物を狙う
ここで鷲尾さんが面白い物をクーラーボックスから取り出しました。
鷲尾さん
キビナゴを餌にしてさっきみたいに遠投はせず足元近くにいるであろうシブダイを狙ってみます。ハリスを5号、鈎もチヌ鈎の10号にして一発大物狙いですね。
記者
スルスルスルルーをカゴ釣りでやる感じですね。
記者
遠投カゴ釣りですが、あえて至近距離を狙う。そのメリットはなんでしょう?
鷲尾さん
ケーソンについた魚を狙います。フカセでも狙える場所なのですが、餌取りとかが多いと釣りにならないですよね。でもカゴ釣りだとカゴが重いので、フカセだと餌取りの餌食になる場所でも、その棚に直接まき餌ができて、さし餌と同調できるのが、メリットです。魚の活性が高い時はほんと強いです。
そういってスルルーを餌に釣りを続けていると突然…
鷲尾さん
喰った!
ぱっと鷲尾さんの方をみるとカゴアルティメイトが綺麗な弧を描いて曲がっています。
と次の瞬間。ふわっとテンションが抜けてしまいました。あいにくの鈎ハズレ。
鷲尾さん
バレてしまいましたね、ごめんなさい。いい引きしたのですが、アワセが甘かったです。
最後にロマンも見せていただき、撤収の時間がやってきたので納竿としました。
釣り終わりに遠投カゴ釣りが楽しめるシーズンも訪ねてみました。
記者
シーズンはいつがいいですか?
鷲尾さん
カゴ釣りのシーズンは、厳寒期を除いてほぼ通年楽しめます。魚種を限定しないので、その時期に合った魚が釣れます。厳寒期でも、仕掛けを細くして工夫してやればグレとかも釣れるので、そこもまた面白いところですね。
今回の取材でカゴ釣りの可能性と面白さをいっぱい知ることができました。
皆さんも是非、ロマンのある爽快かつ豪快な”遠投カゴ釣り“を始めてみてはいかがでしょう?