お手軽、簡単、よく釣れる、そして食べておいしい。という具合にキスのチョイ投げは釣りの経験がないご家族と一緒に楽しむには最高のジャンルだといえます。
そんな楽しいチョイ投げでのファミリーフィッシングを成功に導くための要点を紹介します。
魚種を問わずさまざまな釣りに精通するマルチアングラーであり、がまかつフィッシングキャスターの前山智孝さんが楽しんだ、淡路島でのキスのチョイ投げの実釣写真とともにご覧下さい!
初夏〜秋のファミリーフィッシングといえばサビキ釣りをイメージされる方が多いことでしょう。しかし、近ごろはキス釣りを家族揃って楽しむというパターンもよく聞かれます。キス釣りといえばしっかりとした投げ竿と大きなリールを用い、重たいオモリを投げて釣るという様子が頭に浮かぶ方が多いかもしれませんが、コンパクトな竿の選択肢が増えた近ごろはライトなスタイルである〝チョイ投げ〟が手軽でありながらよく釣れるとあって人気を集めています。
手軽に楽しめるという理由以外に、釣り自体が簡単、キス特有の鋭いアタリが楽しめる、数も期待できる、食べておいしい、という具合です。キスのチョイ投げには魅力がたくさんあります。
特に「簡単な釣り」というのはファミリー層にとって魅力的です。サビキ釣りをはじめとしたウキを使う釣りでは、釣果を得るための最重要項目でありながらビギナーにとっては難しいタナ合わせが求められますが、キス釣りでは「タナ=底」ですから迷う必要はまったくありません。チョイッと投げたらしばらく待ち、底を感じながらゆっくりとリールを巻くだけでキスが釣れるのです。
また、仕掛けがシンプルというのもいいところです。オモリと仕掛けがセットになったうきまろシリーズをはじめとした、アイテムを持参すればすぐに釣りを始められます。
ちなみに、うきまろシリーズにはチョイ投げに適した『うきまろッド&リール』というセット竿もラインナップしています。このようなかわいいキャラクターのアイテムを使うことでお子様が感じる楽しさをさらに高められるでしょう。
そんなお手軽かつ魅力にあふれたチョイ投げのキス釣りですが、よい釣果を上げようと思えばある程度の知識が求められます。そこで、ここではファミリーでのキスのチョイ投げ釣りを成功に導くためにノウハウに迫ってみたいと思います。
竿はコンパクトなロッドが最適!!
竿は2メートルまでのコンパクトなロッドがおすすめです。飛距離の面では投げ竿が有利ですが、長いうえに重量があることから扱いづらさがあるのは否めません。釣りに慣れていないのであれば取り回しのよい短めの竿を選択しましょう。その方が総体的にトラブルが少ないぶんスムーズに釣りが行なえます。
目安としては、アオリイカを狙うエギングロッドや、メバルなどを狙うライトゲームロッドが適しています。もちろん、前述した『うきまろッド&リール』のようなセット竿でも十分に楽しむことができます。
リールは小型のスピニングタイプを!!
リールはナイロン2〜3号の道糸が100メートル程度巻ける小型のスピニングリールであれば種類は問いません。好みのアイテムを選びましょう。
ちなみに、『うきまろッド&リール』についているのはクローズドフェイスという少しかわったリールです。一般的なスピニングリールのように投入時にベールを返したり、ラインを指に掛けるといった操作は必要ありません。リールについたボタンを押したまま振りかぶり、リリースポイントでボタンから指を放せば仕掛けが飛んでいきます。飛距離はやや落ちますが、釣りに慣れていないビギナーでも安定した投入が可能なのでお子様にもおすすめです。
道糸は細めが有利。慣れたらPEに挑戦してみよう
道糸はナイロンの2号前後が適しています。細い方が、仕掛けの飛距離が出る、トラブルの原因となる糸グセが付きにくい、風になびきにくいといったメリットがありますが、そこまでこだわらなくても十分に楽しむことができます。
ある程度釣りに慣れれば、PEラインの使用を考えてみましょう。ナイロンラインと比べて伸びがないことから、キス特有のカンッ!! ブルブルッといった鋭いアタリをより感じることができるため楽しさが増します。また、直線的な強度に優れていることからキスのチョイ投げであれば0.8号前後といった細い号数の使用が可能です。そのぶん仕掛けの飛距離が大幅に向上するといったアドバンテージが得られます。
なお、PEラインは伸縮性がほとんどないため投入時などにかかる瞬間的なショックに弱いという特徴があります。それを補うために先糸(ショックリーダー)として2号前後のフロロカーボンハリスを30センチ程度結ぶのがおすすめです。
仕掛けは市販のセット品が便利!!
仕掛けは『うきまろ投釣五目仕掛』 『うきまろキス・ハゼ大集合!』 『ちょい投げパーフェクト仕掛!』といったオモリとハリス付きのハリがパッケージされたセットものを使うのが便利です。
ハリのサイズは釣れているキスに合わせるのが基本ですが、アタリをドンドン掛けたいなら小さいものを使うのがおすすめです。良型に対しては口内でうまく掛からずにスッポ抜ける可能性もありますが、大バリを吸い込めない小型を掛けることができるぶん数が期待できます。ハリの種類によって号数ごとのサイズが異なることもありますが、およそ6号前後を選ぶとよいでしょう。
そして、釣り場によっては底の障害物などに引っ掛かって切れることがあるので仕掛けの予備は必須です。同じ仕掛けを複数用意するか、5〜10号程度のチョイ投げ用天秤オモリと、
『注意報投釣仕掛2本鈎』や
『ちょい投げリグ キス・ハゼ』などのハリ周りの仕掛けをいくつか用意しましょう。
その際に注意したいのは、たくさん釣れそうだからと5本、10本といった多くのハリを備えた仕掛けを購入しないことです。竿が短いため投入時にトラブルが多発しますし、餌付けに時間がかかるなど、釣りがまともにできないことが考えられるからです。ハリ数は多くても2本とするのが手軽かつスムースさを重視したチョイ投げの基本だと考えて下さい。
そして、オモリに関しては『バランスキャスター』に代表されるフロート内蔵の自立式も用意しておくのがおすすめです。根掛かりの回避性能に優れているため、海藻やシモリが多い場所でもストレスなく釣ることができます。
ただし、浮きやすいという特性から足場の高い場所などや速巻きがヒットパターンとなるケースでは餌が底から離れ、アタリが遠くなることもあります。状況に応じて通常のオモリと使い分けましょう(上記したセット仕掛けのオモリよりも重いので、使用する際は竿のスペックに適合しているかをきちんと確認して下さい)。
少し慣れたら数が狙える本格タックルも使ってみよう!!
チョイ投げの釣りに慣れたら本格的な投げ釣りタックルを用いたキス釣りにチャレンジしてみましょう。長さとパワーのある投げ竿には多バリ仕掛けを使えたり、重いオモリを扱えるぶん遠投が可能であったりといった特徴があります。
たとえば、10本のハリを備えた仕掛けを使用すれば、1度の投入で10匹のキスが釣れる可能性があります。単純に2本バリ仕掛けと比較すると、5倍の釣果が上がるチャンスがあるわけです。
また、遠投力を生かしてポイントを広く探れるぶん、反応が鈍い状況においても喰い気のあるキスを捜す能力に長けているといえます。チョイ投げではほとんど釣果が上がらないのに、本格キャスターは3ケタ釣果を上げることも珍しくないなど、専用タックルを用いたスタイルには圧倒的なポテンシャルの高さがあります。
初めて投げ釣りタックルを手にしてキスを狙うなら竿は23号前後がいいでしょう。おすすめは『がま投 クイックサーフⅡ』。近投はもちろん遠投もこなせる取り回しのよい3.8メートルのモデルとあり、ステップアップを望む方には最適の投げ竿だといえます。
仕掛けはチョイ投げの延長として2本バリでも問題ありませんが、せっかくの本格仕様のタックルですから多バリ仕掛けにチャレンジしてみるのもいいでしょう。そのときにおすすめなのが『50本仕掛』シリーズです。自身のレベルや当日の状況に応じて好みのハリ数でカットして使えるので大変便利です。
各地の砂浜、その周辺の波止や漁港回りなど、砂地帯であればどこでもキスのポイントとなるといっても過言ではありません。消波ブロックなどの足場のわるい釣り場を避け、駐車場のある海水浴場のサーフや平坦な堤防など釣れそうなところを探りながら釣りましょう。
水深のある漁港の堤防などでは一見しただけでは砂地かどうか判断できません。その場合、引っ掛かりやすいハリはつけずにオモリだけで投げてみましょう。砂地帯でのス〜ッとオモリを引ける感触ではなく、ヌ〜ッと重い手応えが伝わるのは泥底、ゴツゴツッとくるのは岩や小石の底、すぐに根掛かりするのは岩礁帯だと判断できます。いずれの場合もキスの魚影は期待できないためすぐに見切るのが賢明です。
臆病な性格のキスは、波打ち際のカケアガリ、ミオ筋(船道)、シモリ、藻場、テトラ際など身を隠せる変化のある地形を好みます。そうした変化は近投エリアにも多くあるため、30メートルも投げれば釣りは十分に成立します。基本的には、それより手前にいるキスだけを狙うという気持ちで挑むのがチョイ投げならではの手軽さを生かして楽しむコツといえます。
逆にいえば、ビギナーが届く範囲を数回探ってアタリがない状況は見切る目安となります。そのタイミングでは周囲にはキスはいないと考えて次の場所へ移動するのが賢明です(あらかじめいくつかの釣り場をピックアップしておくとスムーズです)。広範囲を探れる遠投スタイルほど釣り場を見切るのに時間がかかるため、フットワークのいいチョイ投げスタイルの方が好釣果となることも少なくありません。
なお、そのときに釣れていなくても潮位や時間帯などによってはキスが集まりだすこともあります。上記したポイントの条件が揃った釣り場であれば時間をかえて狙ってみるとよいでしょう。
餌はイシゴカイが一般的です。それをハリにセットしたらチョイッと軽く投げ、オモリが底に着くのを待ってからゆっくりとリール巻いて仕掛けを引きます。
リールを巻くスピードは、通常のオモリであれば1秒間で1回転、浮きやすいフロート系のオモリは1秒間で半回転というのが目安になります。
アタリが遠いときは引くスピードをゆっくりにしたり、止めてみるのもいいですが、ハリスを噛み切る厄介者のフグが釣れる可能性が高まるので要注意。その他、ガッチョなどの他魚が掛かるのも引くスピードの遅さが原因です。そうした他魚がよく掛かるときはリールを巻くスピードを速めてみましょう。
捨て石が入っているなどして足元で根掛かりする釣り場でなければ、仕掛けは手前までしっかりと引くことです。前述した通りに波打ち際のカケアガリがベストポイントであることも少なくないからです。また、近投エリアでアタリが多いときは、隣に人がいなければ仕掛けを斜めに投げるのがおすすめです。そうすることでカケアガリなどのヒットゾーンを長く引けるためアタリのでる確率が高まります。
リールを巻いている途中でブルルッとくるのがキスがヒットした合図です。そのままゆっくりとリールを巻いてキスを取り込みましょう。ブルッといった反応がくると竿をあおりがちですが、引き釣りにおいてアワセは基本的に必要ありません。アワセたことで大きく動くオモリを警戒して群れが散ることもあるので注意しましょう。
キスは群れでいることが多いので、1匹釣れたら同じ場所を攻めることで連発が期待できます。ただし、ポイントへ仕掛けを直接投入するのはNG。着水音にビックリして群れが散ってしまうからです。釣れたポイントでは仕掛けが落ち着くように、少し先に投入することを意識しましょう。
投入する角度や仕掛けを引くスピードを変えたり、沖目を狙うなど、ひと通り探って反応がなければ釣り場内で小移動、それでも反応がなければ釣り場自体を変更する大移動を考えましょう。身軽さを生かしたテンポのよい釣りを意識することもファミリーでキスのチョイ投げを成功に導く秘訣です。
この他にも数を釣るためのノウハウがいろいろとある奥深さを持つキス釣りですが、難しいことを考えなくても楽しめるのがチョイ投げのよいところです。紹介した要点をまずは押さえていただき、キスの反応がよくなる6〜9月のハイシーズにファミリーでの釣りにチャレンジしてみて下さい。きっと、お子様とともにそのおもしろさのトリコになるはずです。