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【今この釣りがすごい】
10枚超えも当たり前!チヌヘチ釣り超入門 タックル編
いま、チヌがすごい!
それも大阪湾という大都市のど真ん中でチヌが爆釣している。
ヘチ釣り・落とし込み釣りで1日10枚どころか、20枚、30枚、時に40枚以上も釣れてしまうという。
この道、30年のベテランをして「こんな釣れ方は過去に経験したことがない。
すさまじい魚影です」というほど。これは、もう、いま、ヘチ釣りを始めるしかない。
PROFILE
がまかつフィールドテスター
大田徹
大阪湾の沖堤防を主戦場にチヌを釣りまくるヘチ釣りの名手。1日に20枚や30枚のチヌを当たり前にものにする。大阪湾にヘチ釣りを持ち込んだ加藤氏・小西氏が立ち上げた落南会に20歳の頃に入会し技を磨いた。ヘチ釣り歴は30年を超える。がまかつフィールドテスター。
チヌヘチ釣り超入門
空前の爆釣劇、いま大阪湾のチヌがすごすぎる
チヌといえば、身近な存在でありながら気難しい最高峰のターゲット。最初の1匹を手にするために3年をようしたという人もめずらしくない獲物だった。
全国から猛者が集結するトーナメントで幾度も上位入賞を果たしている大田でさえ、少なからずボウズの経験はあるし、2ケタを釣るという事はけして低いハードルではなかった。
それが、ここ数年で激変した。
20枚なんて、いままでの感覚でいえば年に数回もないような爆釣の基準だったんですが、ここ2~3年は、平均的な釣果になっている。30枚とか、ふつうに釣れますよ。5月の後半、丁度産卵明けの喰い始めの時期には40枚釣れた日もありました
しかも、サイズまでデカイ。
平均サイズが45㎝とか、48㎝くらいですかね。50㎝オーバーもけして珍しくないですよ
もちろん、シーズンで釣果は上下するが、本来、夏がハイシーズンであったのが、温暖化の影響かシーズンも長くなっている。
1年中、釣れるようになりました。さすがに冬になると釣果は落ち込みますが、それでも12月に10枚釣れたりすることもままあります。しいていうなら2月ですかね。さすがに水温10度を切る2月は、オフシーズンといえばオフシーズンです
3月〜4月に産卵があり、5月頭から産卵後の一服に入る。
それも温暖化の影響なのか、それとも魚が増えたからなのか、全部の群れが一度に抜けないんですよ。タイミングをずらして産卵に行く。だから、5月の連休をすぎると魚は一時的に減りますが、釣れないというほどじゃないんですよ
そうこうする間に6月になるとすべてのチヌが産卵から戻って来て、最大の魚影になり夏のハイシーズンを迎える。
初めて落とし込みにチャレンジした男性が半日で7枚。ヘチ釣り数回の女性がスリットに初めて挑戦し、初回からボーズ無しで3度目には14枚も釣りましたよ。それくらい数もいるし型もいい。それがいまの大阪湾です
初心者でも複数枚、チヌが釣れてしまう。これはもうヘチ釣りをやらないわけにはいかない。
チヌヘチ釣り超入門
なにが違う?ヘチ釣り、落とし込み釣り、前打ち
チヌ未経験者であれば聞いたことさえないかもしれないが、チヌの狙い方にはヘチ釣り、落とし込み釣り、前打ちの3種類がある。チヌの釣り方自体は本当に種類が多くて、他にもフカセ釣りや紀州釣り、ダンゴ釣り、ルアーなどがあるが、堤防やテトラポッドから釣る夏の釣りの主流といえば、ヘチ釣り、落とし込み釣り、前打ちの3種類となる。
この3種類、仕掛けがそれほど変わらず、エサも一緒。釣り方も、パッと見にはそれほど差がない。何が違うのだろう?地域的な呼び方の差なのだろうか?
竿の長さは違いますね。それによってできることも変わってきます。仕掛けも微妙に違います。ヘチ釣りは2.4〜3m、落とし込みが3.6~4.1m、前打ちが5.3~6.3m
釣り方の種類にあわせて竿の長さが違う。
まず、前打ちはテトラ帯や堤防で少し沖の底を狙う。そのため長い竿になっています
一方、ヘチ釣りと落とし込みは、同じ壁際をタイトに攻める釣り。
ヘチ釣りは目印を使いません。落とし込みは目印を使います。釣ろうとしているチヌは一緒といえば一緒ですが、僕の見解というか、僕のまわりの人の話にはなりますが、落とし込み釣りは、イガイをスライドさせてオーバーハングを狙ったり、上層で喰ってくるチヌの様々なアタリを目印でとらえる人たちですね。ヘチ釣りは目印を使いません
竿が短いほど小さなポイントをタイトに刻むことができる。シチュエーションに応じて落とし込みとヘチ釣りを使い分けるのだろうか?
僕の場合、ヘチ釣りが主ですが、たまにイガイのスライダー釣法やフジツボで上層狙いの目印をもちいた落とし込みもします。しかしながら、年間を通しては上層から底までを隈なく探れるヘチ釣りが最強なのではないでしょうか
チヌヘチ釣り超入門
エサはイガイ。付け方は繊維掛け
ヘチ釣りのハイシーズンは夏。夏といえば、すべての魚が元気な時期でチヌはもちろん、フグやアイナメの子など、エサ取りも多く元気である。そういったエサ取りをかわす意味でも、昔からヘチ釣りや落とし込み釣りではイガイをエサに使う。
ヘチ釣りの主なエサと言えばイガイですが、近年イガイを使える期間が短くなっています。大阪湾では水質の改善で良質なプランクトンが減り、イガイの付着が少ない。また成長が遅い年もあります。そして、大雨や気温上昇による高水温で7月中旬には開いて落ちてしまう事が多くなりました。その代用としては湾奥や河口に多く付着しているミジ貝が有効です。一年を通して言うと春はパイプ虫、地エビや青コガネ。初夏から夏の最盛期はイガイ。イガイが落ちてしまったあとは、ミジ貝や岩ガニ。お盆を過ぎる頃から秋はフジツボやサクラ貝と四季に応じて様々なエサを使います
イガイのエサの付け方といえば、貝の中にハリを通すセッティング。
んーとですね。そういうエサの付け方も昔はやっていたんですが、いまはイガイの繊維にハリを絡ませます。いわゆる繊維掛けです
そうするとハリがむき出しになることになる。
この付け方にしてからハリがかりがよくなりましたね。あと、使うハリが小さくなりました
貝にハリを埋め込んでいた頃は貝の大きさに応じて3号〜6号くらいまでのハリを使っていたが、繊維掛けになってからは3号、4号を使うようになった。そのハリは、どんな種類がいいのだろう。
ずばりナノスムースコートが施されているハリですね。形状ではなく表面処理の話ですが、ナノスムースコートのハリを使うようになって、バレがずいぶん減りました
ハリはチヌR3号4号、GハードV2チヌエース3号4号、貫通筏3号4号。
これらを形状や活性、ポイントのシチュエーションで使い分ける。セッティング方法は、大粒のイガイの繊維にハリを掛けハリがむき出しになるようにする。
これは僕のやり方ですが、状況によって大きさは変わりますが3センチから5センチくらいのメイン1粒、それに小粒を数粒からめてハリに掛けます。喰いによって小さいイガイにバイトが集中したり、大きいイガイを丸呑みする時等、両方に対応できます
オモリはBか2Bをハリの軸にセットする。
ホームグランドの南港新波止は関西の沖堤防でも足場の高さがトップクラス、しかもスリットなので若干重いガン玉を使います。だいたいはBか2Bのどちらかで大丈夫ですが、うねりや波、風の影響でスリットの柱周りの壁際をキッチリとキープ出来ない時は3Bのガン玉、またはそれに2Bを足したりする事もあります。
チヌヘチ釣り超入門
標準は2.7m。竿の長さは足場の高さで使い分ける
大田が愛用するへちさぐり銀参郎(がまかつ)は長さが3種類、強さが3種類ある。どれを選んだらいいのだろう?
まず、長さ。これは自分がよく釣りに行く足場の高さで選びます。水面が低い堤防なら2.4m。足場が高い堤防なら3mですね。そういう意味では2.7mであれば割りとどこでもこなします。ただ、ファイトの事を考えると、3mの長さがあった方が魚をいなしやすいです
特に風が吹いて道糸がはらんでしまう場合には、海面と竿先の間を少しでも狭くした方がイガイを一定速で落としやすいし、アタリもとりやすい。
強さは底までストレートな壁の堤防を攻めるならMでいいです。僕のようにスリットの中で掛けて、掛けた瞬間引きずり出さなければいけないとか、四方を囲まれたコンクリートの枠の中でスリットに逃げ込むのを無理やり止めなければならないとか、そういうときはMH。Hまでいくとやりすぎかな。日常的な僕の釣りではHは出番がないです。どうしても障害物に走られてしまって取り込めないというときとか、めちゃくちゃ喰いがよくて数を釣りたいときにはHを使ってみるといいかもしれません
いくつかのメーカーからへち釣り用のロッドは出ているが、がまかつの銀参郎は評価が高いという。
僕はがまかつのテスターですから、もちろんいいものを作れるようにテストしますし、作り上げた竿には自信がありますが、いろんなメーカーの竿を使い比べるまわりのヘチ釣り師から『がまかつのへち竿はバランスがいいよね』、『銀参郎を使ったら他の竿は使えなくなる』という話が何人もの人から聞けたのはうれしい限りです
チヌヘチ釣り超入門
時に水面直下でバイト!?
盛期は落とすのは深くても4m(2ヒロ半)まで
道糸フロロカーボン2.5号、極小のヨリモドシ、ハリス2号ひとヒロ、ハリチヌR4号にイガイ数粒セット。オモリは2B。これを壁際に落とす。水深は8mくらいある。底まで落とすのだろうか。
ワンストロークで落とせる浅い場所なら底に落として、なんならステイさせてもいいですが、深い場所では底まで落とすようなことはしません。イガイを食べたいチヌは浮いているんですよ。どのタナに浮いているかというと、イガイが付着しているタナです。ですので、せいぜい2ヒロ前後くらい落としたら、次のポイントに入れなおします。喰ってくるときは入れた瞬間にアタリがありますよ。水面まで浮いていることもありますからね
そうして岸際ギリギリにイガイを落とすと、スプールをゆっくりと指ではじきながら、糸を送り込んでいく。このとき、道糸はわずかなカーブを描いたままなのだが、竿先は上下している。これはイガイが落ちるスピードよりも糸を早く送り込み、余剰分を竿先の上下動で吸収し、イガイのフォールスピードは一定に保つための動作。このときに、ラインがぶれていない。
慣れれば誰でもできますよ
大田はそういうが、やってみると難しい。糸を送り出すのが遅れればイガイが止まってしまい警戒される。糸を送り出しすぎればラインが大きくふけてしまう。ぎこちなく送り出せばラインが踊ってしまう。イガイが一定速でフォールする分にはバイトは得られるが、困ったことがひとつある。
アタリがとれないのである。
チヌのアタリのすべてが小さく繊細なわけではないが、実際、一瞬、ラインが止まったり、ラインが余分にふけたりするようなアタリが出る。これを正確にとらえていくのが本来のヘチ釣りの醍醐味であり、技の習熟になる。
実際、ほんのつい数年前までは並みいるベテランヘチ釣り師100人が堤防に集結してチヌを狙うトーナメントで、全員ボウズということもあったくらいです