上村恭生
浅ダナのセット釣りと両ダンゴを得意とする。型より数重視で、その日、その池でもっとも釣れるパターンの解明に情熱を燃やす。G杯をはじめ、数々の大会で優勝・入賞を果たす生粋のトーナメンターである。京都府在住。
「長尺というのは、たくさんそろえるようなものではない。基本があって昔から18尺と21尺。この2本をそろえるところから始めてみるといい。もちろん、想定する釣り場があって、使う予定の長さがあるのであれば、その長さを買うべき」
では、長尺のへら竿が活躍するのはどんな時だろう。
「そもそも人より釣るだけが魚釣りではない。なんといっても、のんびり気持ちよく釣りたいなら、長尺のへら竿が似合う。短尺のセット釣りは手返しよくあわただしい釣りになるきらいがある」
長い竿こそ、へらぶな釣りらしいではないか。
では、戦略として長尺を振るべき時は、どんな時だろう。
「新べらが沖にしかいない。底を釣りたい。へらのいるタナに届かない。そういう時は長尺を使わざるをえない」
何よりも数にこだわる上村である。短尺のセット釣りの方が出番は多い。だが、それだけではカバーしきれないのがへらぶな釣り。
「すごい竿だよね、幻将天。この重量を相手に曲がっていても余裕」
2枚同時に掛かったへらをあしらう上村の口から思わず漏れた。
へらぶな以上の魚が釣れる可能性がない管理池なら幻将天でも幻煌天でも好みで選んでいい。ただ、コイが釣れる可能性があるような野釣りなら、幻将天がいい。
「コイというか、そもそもへらぶなは50㎝が大物の基準と思われているが、記録級の魚となれば60㎝。いや、70㎝の可能性さえある」
京都に住む上村にとって、日本最大の湖、琵琶湖は遠くない位置にある。漁師の話では琵琶湖の定置網に70㎝が入ったことがあると伝え聞いている。
「そんな巨大な魚に挑む日が来るなら幻将天を選ぶことになるだろう。ただね、そういう魚は食性が違う。練りエサは食わないに違いない」
いまは、まだ、型よりも数という上村である。あるいは競技への執着がひと段落した先で幻将天を手に、まだ見ぬ幻へ挑む日が来るのだろうか。