緊急連載!G杯チャンプ・前岡正樹「競技のすべて」

前岡正樹(まえおか・まさき)

 1974年生まれ。ホームグラウンドである三重県尾鷲や静岡県南伊豆で腕を磨き、第38回G杯争奪全日本がま磯(グレ)選手権で優勝。オモリを多用した半遊動仕掛けから軽い仕掛けまで幅広く使いこなす。がまかつフィールドテスター。

第38回G杯争奪全日本がま磯(グレ)選手権で栄冠をつかんだ前岡正樹さん。
そんな現役チャンピオンである前岡さんに、競技に対する考え、 そして勝つまでのエピソードなど、G杯への熱い思いを語っていただいた。

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競技は自身の技量を試す場所。全国的にみて自分がどれくらいの力を持っているかを知る舞台でもある

前岡さんにとって、競技の世界とは?

 「私にとって競技は、普段の自分の技術がどこまで通用するのかを試す場所だと思っています。でも、ホームグラウンドの渡船内で一番釣ったとしてもそれは全国区ではありませんよね」

 「そこで、自分が、今全国でどの位置にいるのか、よりうまくなっているのかを知るためにどうすればいいか、と考えるとおのずと競技という形になりましたね」

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"釣りがうまくなりたい"という気持ちから、現在の師匠である横井公一さんに教えを授かる

競技への道のりは?

 「27、8歳ぐらいのときに本格的に磯へいくようになったのですが、ちょうどその頃に、現在の師匠である横井(公一)さんがトーナメントの練習をつけてくれるっていう話がありまして、競技への思いもあったし、釣りがうまくなりたいという気持ちも大きかったので参加することにしました。そこでは、短い時間でいかに魚を引き出すかなどの特訓をしてもらいました。」

※横井公一(よこい・こういち)
 磯釣り黎明期の巨人の一人で、三重の闘将と呼ばれる三原憲作さんの技を受け継ぐ愛弟子。三重県下や伊豆をホームとし、繊細な釣りでグレを釣りまくる競技派で、さまざまな大会で好成績を残す。

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勝てたときのうれしさを体感でき、さらに認めてもらえるステージでもあるG杯

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競技に参加することで仲間が増え、広がりが持てるのも魅力のひとつ

競技の魅力や楽しさを教えてください。

 「仲間が増えるのも競技の魅力ですね。選手たちは同じ厳しい条件の中で戦います。そのため、試合が終わった後はその苦しさを共感できるので特に仲良くなれます。情報交換もできますね。また年齢に関係なく人脈の広がりを持てるのも競技のいいところだと思います」。

 「もうひとつはやはり結果ですね。勝つことによって認められるというか…。俺、釣り上手やで! といったところで誰も認めてくれないじゃないですか(笑)。それもホーム以外で勝てば勝利の価値はさらに上がります」

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G杯で優勝するために練習を繰り返し力を注いできた

前岡さんにとって、G杯とは?

「昔、色々なメーカーのテスターたちが戦う大会があったんですよ。その結果をずっと見てきて、総じてがまかつのテスターは強いなぁという印象を受けました。そんながまかつのテスターが集まるG杯で優勝することこそ日本一だと改めて思いました。また、G杯は、私の中では最高峰の大会であり、もっとも重要な大会です。実際、まわりからの称賛はG杯が一番でしたね」。

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8年前の大敗で、当地の釣りを完全コピー

優勝するまでの道のりや苦労話を教えてください。

 「全国大会直前に三重県錦の磯で練習していたんですが、波にのまれて、不運にも、タモとバッカンを全部流してしまいました。また、それから一週間後には子供が交通事故。幸い軽いケガだけだったので、嫁さんも嫌な顔をせず送り出してくれました。でも不運続きはそれだけはないんですよ」

 「試合前日に試釣をしたときにリールのハンドルがねじ切れてしまってメインのリールが使えなくなりました。しかし、逆転発想でもうこれ以上悪いことは起きないだろうと全国大会に挑み、結果、優勝することができました」。

 「もうひとつは、会場(大分県米水津)に合った釣りをすることでした。8年前は、地元の方にこの釣り方がいいよとアドバイスをもらったのですが、結局、自分の釣りを押し通してしまって、当時一番の注目株であった、猪熊(博之)さんに負けてしまいました。なので次は地元の釣りをコピーしようと決めていました。ちなみにその大会では並みいる強豪を押しのけて猪熊さんが優勝されましたね」

※猪熊博之(いぐま・ひろゆき)
 2011年の第30回G杯争奪がま磯(グレ)選手権の覇者。仕掛けをナチュラルにフォールさせ違和感を与えずグレをしとめる名手。甘いマスクと流れるような釣りスタイルで次世代を背負う九州の雄。

「大分は、軽い仕掛けでマキエと合わせながら釣っていくスタイルが多いのですが、私のホームである三重では軽い仕掛けを使っても型が出ないことが多いんですよ。深いところに仕掛けが入っていく潮がないので、オモリを多用した仕掛けが必要になります」

「それに狙うポイントも違います。三重では磯際周辺が好ポイントになりますが、大分の米水津では際を釣ってしまうとカンダイの餌食になってしまいます。そのため、潮目や潮の中、変化のあるところを狙わなければなりません」

「予選リーグではまだ仕掛けが不慣れなこともあって、全勝ではあったんですが僅差だったり、26㌢をたった1尾釣って勝ったとか、相当危なっかしい試合をしました。しかし、決勝リーグに入ってからは、仕掛けの使い方がなじんできていい感じで釣りができ、勝利に結びつけることができました」。

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2つの願いを叶えた前岡さん。次なる目標は2連覇

G杯の頂点を取った感想を教えてください。

 「人生の中で、がまかつのテスターになりたいということと、G杯で優勝したいという2つの願いがあって、今回それを叶えることができました。でも、これがはじまりだという気持ちもありますし、優勝したことで新しい目標ができました。2連覇に向けて、次回会場と予想される高知県沖ノ島での釣りに挑まなければなりません。でもね、

 「優勝以外にはないと自分自身を奮い立たせ、マキエを撒き続け、仕掛けを振り込み続けることで、必ず釣り勝ちます」。

写真/聞き手:細田亮介