久保野孝太郎「ウキフカセ秘伝」

久保野孝太郎(くぼの・こうたろう)

1969 年生まれ。がまかつフィールドテスター。関東勢初のG 杯グレ優勝を果たしたほか、G 杯チヌでも準優勝とトーナメントシーンで輝かしい戦績を残し、全国の磯を舞台に活躍。

久保野孝太郎「ウキフカセ秘伝」

現場でよく見る“釣れない”人への提言②

何があっても足下〜竿下、沖目には見向きも……

確かに“近め”は釣りやすい!
でもそれに終始して終わるのは……

地磯で竿を出しているとワンドを挟んでほかの釣り人と向かい合わせになることがよくあります。自然と対岸の釣り人が目に入ってしまうのですが、同じような場所ばかりに仕掛けを入れ続けている人が多いことに驚きます。彼らが狙っているのはおおむね磯際や竿下。そのこと自体が悪いわけではありません。でも、そういう人は沖に潮目などの好ポイントがあっても狙うのは“近め”のみ。「もっと視野を広く持てばいいのに……」とモヤモヤした気持ちになりますが、こちらからは何も言えません。

察するに“釣りやすい”のだと思います。近めを釣る限りはウキを見失う心配がなく、マキエも正確に投入できますからね。ついでに言うと、こういった釣り人ほどマキエの総量も、撒く回数も少ないように感じます。確かに磯際やハエ根際は撒いたコマセが流れていかず、その場に蓄積されます。チビチビ入れ続けてポイントを育てる楽しみがあることは否定しません。

でも、こればかりを続けていては状況に応じた臨機応変はにつきません。磯際やハエ根際は数ある狙い所のひとつと考えて視野を広げましょう。潮を読む力やマキエのコントロール、仕掛けの流し方などを身につけるきっかけになりますよ。

久保野孝太郎「ウキフカセ秘伝」画像1
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磯際などの近いポイントは仕掛け操作や投入が容易なせいか固執する人も多いポイント。しかし、数あるポイントのひとつでしかない。

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ベテランはわずかな変化を探して常に周囲を観察している。この視野の広さが釣果に直結するのだ。

久保野が考える“釣れる”人になるための宿題!

釣れないことを続けない!

釣り場でよく目にするのが、ほとんど竿が曲がっていないのにひたすら同じ攻めを繰り返している人。過去にいい思いをしたパターンの再現を期待しているのだと思いますが、どうしても一か八かの釣りになって空振りが多くなります。何か信念があれば別ですが、結果が出ないことを漫然と繰り返すのはムダです。まずは攻め方(仕掛けとマキエの投入点やタイミング)を変え、それでダメなら狙い所を変えていきましょう。もちろん磯際やハエ根際も有望なポイントですから、狙い所を移しながらでもマキエは入れ続けてください。それを続けておくことで、たまに仕掛けを入れたときにズドン! と良型が食ってきたりしますよ。

“取られる”ときは“取られない”ことを
“取られない”ときは“取られる”ことを

上のアドバイスにも通じることですが、自ら動いて状況を変化させていくことがこの釣りでは大事になります。

本誌発売頃には水温が低下してエサ取りが減り、グレも底近くの深ダナや根周りで鈍い動きをする状況になっていると予想できます。いわゆる“寒グレ”の釣りですが、こうなると付けエサが残ることが多くなります。それは付けエサと魚が出会っていないという証拠です。釣り人が設定したウキ下や狙いダナと魚の食いダナがズレているわけですから、すり合わせる作業が求められます。逆にエサ取りが多い時期は、エサ取りの包囲網をかいくぐる手を繰り出さないと本命の口元まで付けエサを届けられません。こういうときは敢えてエサ取りが嫌がるような手、エサを取りきれない手段を考えましょう。

能動的に打つ手を変え、状況や反応の変化を引き出す。これも釣果を上げるコツです。

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