久保野孝太郎(くぼの・こうたろう)
1969 年生まれ。がまかつフィールドテスター。関東勢初のG 杯グレ優勝を果たしたほか、G 杯チヌでも準優勝とトーナメントシーンで輝かしい戦績を残し、全国の磯を舞台に活躍。
「タナ」や「ウキ下」の定義と決め方を理解しよう
似ているが実は別モノ!正確な情報収集がキモ
魚がどのくらいの水深で食ってくるのかは誰もが知りたい情報です。しかし、それを把握してもアプローチを間違えば釣果は期待できません。例えば船釣りでは、魚群探知機を見た船長が「●mでやってください」と深さ(タナ)を指示してくれますから、指示どおりに釣れば一定の釣果が期待できます。しかしウキフカセ釣りではそうはいきません。立ち位置によって潮流や地形が変わり、使う仕掛けもバラバラ。仮に同じ仕掛けを組んでも、操作の熟練度によって仕掛けのなじみ方に差が出れば同じようには攻められません。それだけに「どのくらい?」とアバウトに質問されると答えに窮してしまうのです。
また、「タナ」と「ウキ下」という2つの単語を混同して理解している人が多いように思います。「タナ」は狙っている魚の遊泳層を指す言葉です。ただ、グレ狙いのウキフカセ釣りのように中層を狙う場合、それを正確に数値化して把握するのはまず不可能。魚が見える場合はそれを参考に、見えない場合は「このくらいかな……?」と推察するしかありません。そうして「タナ」を判断したうえで、仕掛け作りを含めたアプローチを組み立てます。そこで話題に上るのがウキ止めからハリまでの長さを指す「ウキ下」という言葉です。ただ、海中では「ウキ下=タナ」という関係性はほぼ成立しません。また、同じ「タナ」を攻めるとしてもウキを浮かせるか沈めるか、ウキ止めの有無(固定・遊動・全遊動)によってもアプローチが変わります。例えば5mの「タナ」を攻める場合、ウキ止めを付けてウキを浮かせる仕掛けでは「ウキ下」が6〜7m必要な場合もありますし、ウキごと沈めたり全遊動のアプローチを用いれば、「ウキ下」は短くても同じ「タナ」を攻めることは可能です。
仕掛けの姿勢が変われば同じウキ下設定の仕掛けでも付けエサが到達する位置が大きく変わる。海中のわずかな変化も見逃さないよう、偏光グラスを常に装着して情報収集に務めたい
前頁で「まずはハリスは2ヒロ(3m)で!」と説明しましたが、タナやウキ下は海や魚の状況に応じて変えていかねばなりません。ここでは明確な答えではなく、摺り合わせていく方法論を説明します。
仕掛けを組む前にすべき手順として、撒いたコマセの沈み方や流され方、魚の動向をよく観察してください。もちろん偏光グラスは必須です。潮流の速さによって仕掛けの姿勢が変わり、付けエサの沈み方も変化しますから、それを計算に入れた仕掛け作成が必要です。海中観察が済んだら偵察用の仕掛けを組んで釣り始めます。まずは浅いところから探り始めて、エサが取られる深さまで段階的に下げていきましょう。エサが取られる仕掛け設定を探る作業を続けてください。
掛かった魚のハリ掛かり具合も判断基準になります。飲まれた状態でのハリ掛かりが頻発するようなら、魚の食いダナに対して付けエサが深く沈み過ぎている可能性が考えられます。逆に仕掛けが完全になじむ前にウキが勢いよく沈む場合は、仕掛けの設定よりも浅いタナで食っていることが考えられます。このような情報から判断して最適の「ウキ下」「タナ」設定を導き出してください。
タナ設定がばっちり合えばアタリを引き出せる確率は確実に上がる。掛かった魚が小型や外道でも答えが出た喜びは大きい
この記事は磯・投げ情報11月号の記事を再編集し掲載しております。