久保野孝太郎(くぼの・こうたろう)
1969 年生まれ。がまかつフィールドテスター。関東勢初のG 杯グレ優勝を果たしたほか、G 杯チヌでも準優勝とトーナメントシーンで輝かしい戦績を残し、全国の磯を舞台に活躍。
POINT 神奈川県真鶴半島・カワウソ②
状況が変わったのは午後2時頃のこと。前頁の状況②の図のような潮流となり、引かれ潮との合流点には潮目が発生しました。打つ手がなく、漫然とした打ち返しに終始していた私にとっては魅力的な状況ですが、私の釣り座からは攻められません。引かれ潮の下手にはⒶさんが竿を出していますし、沖の潮から流し込める場所ではⒷさんが熱心に打ち返しています。ただ、Ⓐさんはそれほど仕掛けを流している様子がなく、どちらかと言うとそれまでに釣果を得ていた右手を釣りたそうです。一方のⒷさんはこの頃合で竿を置いて休憩……。
しばし悩みましたが、様子を見に行きがてら先釣の2人と言葉を交わし、2人の間から仕掛けを入れるお許しをいただけました。Ⓐさんからは「じゃあ私はそちら(さらに右)へ仕掛けを入れていいですか?」と問われたこともあり、交渉成立とばかりに移動します。結果的にはこれが大正解で30〜35㎝級が3連発。その間に潮位が上がってバッカンに波飛沫が直撃し、Ⓑさんも釣りを再開した頃合で撤退しましたが、お二人のおかげでなんとかボツ取材を免れました。
撮影を終えて釣りを再開すると再び竿が曲がって連発!「何度も申し訳ない……」と謝りつつ30㎝オーバーを取り込んで思わずニヤリ!「今までの苦労は何だったんだろうね(笑)」
同じパターンでもう1尾追加!もはや入れ掛かりに近い状態だったが、お邪魔している立場なのでここらで撤退することに。「協力してくれた皆様のおかげです!」
午後3時頃になるとⒶさんが納竿して釣り座が広く使えるようになりましたが、今度は潮目が遠ざかってしまいました。普段ならそれほど問題のない距離でしたが、バッカンが波を被ってしまった影響でコマセがベチャベチャ……。どうにも遠投できません。手直しする配合エサの予備も持ち合わせておらず、仕方なくベチャベチャコマセを先に撒いてしまうことにしました。ここで慌てて全体を混ぜ合わせてしまうと、コマセ全体の質が低下してしまいます。水分過多になっていない“マシな”コマセを温存しておく作戦です。
とりあえずはベチャベチャコマセが届く範囲から仕掛けを流してみますが、潮が緩んだ手前のエリアはキタマクラが幅を利かせるようになっていました。真冬なら潮流がなくてもグレのタナまで到達できますが、エサ取りが多い秋〜初冬にはそうはいきません。さて困った……。
それでも粘り強く仕掛けを打ち返し、やがて遠投できるコマセが使えるようになったところで30㎝級の本命を追釣。結果オーライ的な1日でしたが、何とか魚を出して終えることができました。
日没が近づくと潮流が遠ざかってしまい、磯周りはキタマクラなどのエサ取りの巣窟になってしまった。先の入れ掛かり中にバッカンに波が入ってしまったためコマセを沖のポイントに届けられず、再び我慢の時間を過ごすことに。「この時間にもう1尾取りたいけど、コマセが届かないよ……」
波を被って水分過多になったコマセは混ぜ返さずにそのまま使い、底部と端に残った良質のコマセで最後の勝負!すると沖のポイントで30㎝強の本命をゲット。「サイズアップとはいかないけど、最後に釣れて納得!」と破顔一笑!
この記事は磯・投げ情報2月号の記事を再編集し掲載しております。